約 1,319,096 件
https://w.atwiki.jp/dream11/pages/1068.html
選手名 コスト PG適正(赤) 初期値 MAX値 売値 サブポジ OF DF TEC OF DF TEC 数値合計 2014 ジャンルイージ ブッフォン 62 GK 347 1760 677 1132 5723 2202 9057 ユヴェントス サルヴァトーレ シリグ 60 GK 333 1727 600 1086 5613 1953 8652 パリ・サンジェルマン アンドレア バルツァーリ 60 CB 540 1285 848 1758 4179 2758 8695 ユヴェントス ジョルジョ キエッリーニ 61 LSB,CB 596 1262 830 1940 4104 2700 8744 ユヴェントス イニャーツィオ アバーテ 59 RSB,RMF 860 864 858 2795 2811 2790 8396 ミラン RWG レオナルド ボヌッチ 59 CB 590 1166 835 1920 3791 2715 8426 ユヴェントス マッティア デ シーリオ 59 LSB,RSB,RMF 818 898 875 2661 2920 2844 8425 ミラン CB マッテオ ダルミアン 59 LSB,RSB,LMF,RMF 832 890 869 2708 2893 2825 8426 トリノ CB ガブリエレ パレッタ 57 CB 503 1157 826 1637 3762 2687 8086 パルマ マルコ パローロ 59 OMF,DMF 1024 581 964 3328 1891 3136 8355 ラツィオ LMF,RMF アンドレア ピルロ 62 OMF,DMF 1028 591 1172 3342 1922 3810 9074 ユヴェントス クラウディオ マルキージオ 61 OMF,DMF 1127 522 1050 3664 1697 3415 8776 ユヴェントス LMF,RMF RWG アントニオ カンドレーヴァ 60 OMF,RMF,RWG 1076 506 1077 3501 1645 3502 8648 ラツィオ LMF DMF,LWG ダニエレ デ ロッシ 62 DMF,CB 3006 2875 3067 8948 ローマ OMF,LMF,RMF マルコ ヴェラッティ 60 OMF,DMF 906 751 966 2948 2443 3141 8532 パリ・サンジェルマン チアーゴ モッタ 60 DMF 902 792 951 2935 2575 3092 8602 パリ・サンジェルマン OMF CB アントニオ カッサーノ 60 CF,LWG 1197 325 1130 3892 1059 3674 8625 パルマ RWG OMF アレッシオ チェルチ 60 CF,RWG,RMF 1215 372 1060 3952 1211 3446 8609 アトレティコ・マドリー LWG,OMF チーロ インモービレ 60 CF 1211 395 1064 3937 1285 3458 8680 12000 マリオ バロテッリ 61 CF 1230 336 1141 4001 1092 3709 8802 ミラン マージーサイド・レッド LWG,RWG OMF 2015 S1 ジャンルイージ ブッフォン 62 GK 1148 5782 2227 9157 ユヴェントス サルヴァトーレ シリグ 61 GK 559 2845 1030 1120 5691 2061 8872 パリ・サンジェルマン ダヴィデ アストーリ 58 869 1961 1420 1739 3922 2840 8501 ローマ ジョルジョ キエッリーニ 61 CB 1980 4173 2730 8883 ユヴェントス LSB アンドレア ラノッキア 58 CB 1814 3884 2802 8500 インテル レオナルド ボヌッチ 60 1988 4019 2768 8775 ユヴェントス アンドレア ピルロ 62 OMF,DMF 3365 1953 3842 9160 ユヴェントス クラウディオ マルキージオ 61 OMF,DMF 3720 1734 3446 8900 ユヴェントス LMF,RMF RWG アントニオ カンドレーヴァ 60 OMF,RMF,RWG 3607 1624 3530 8761 ラツィオ LMF DMF,LWG ダニエレ デ ロッシ 62 1527 1455 1551 3054 2910 3102 9066 ローマ マヌエル パスクアル 58 LMF,LSB 2797 2769 2904 8470 フィオレンティーナ LWG DMF,RSB アルベルト アクイラーニ 59 3125 2322 3157 8604 フィオレンティーナ マッティア デ シーリオ 58 L・RMF,L・RSB 2764 2870 2880 8514 ミラン CB マッテオ ダルミアン 59 L・RMF,L・RSB 1437 1458 1442 2875 2917 2884 8676 トリノ CB マルコ ヴェラッティ 60 OMF,DMF 3018 2476 3206 8700 パリ・サンジェルマン アレッサンドロ フロレンツィ 58 O・L・RMF,RWG 3562 1800 3177 8539 ローマ DMF,LWG CF セバスティアン ジョヴィンコ 58 CF,LWG,OMF 3779 1175 3519 8473 ユヴェントス RWG LMF,RMF チーロ インモービレ 60 CF 3959 1292 3477 8728 グラツィアーノ ペッレ 58 CF 3632 1455 3380 8487 ハンプシャー・レッド シモーネ ザザ 58 CF,RWG 3772 1329 3407 8508 サッスオーロ LWG,OMF 2015 S2 ジャンルイージ ブッフォン 63 GK 579 2906 1118 1159 5812 2236 9207 ユヴェントス サルヴァトーレ シリグ 61 GK 562 2843 1032 1124 5687 2064 8875 パリ・サンジェルマン ジョルジョ キエッリーニ 61 CB 978 2094 1370 1958 4189 2741 8888 ユヴェントス LSB マヌエル パスクアル 59 LSB,LMF 1412 1398 1466 2825 2796 2932 8553 フィオレンティーナ LWG RSB,DMF アンドレア ラノッキア 59 CB 924 1951 1415 1849 3903 2830 8582 インテル レオナルド ボヌッチ 61 CB 1009 2019 1417 2018 4038 2834 8890 ユヴェントス マッティア デ シーリオ 58 LSB,RSB 1375 1445 1449 2750 2890 2898 8538 ミラン CB,RMF マッテオ ダルミアン 59 L・RSB,L・RMF 1432 1463 1446 2864 2926 2893 8683 マン・レッド CB ロレンツォ デ シルヴェストリ 57 RSB,RMF 1262 1413 1481 2526 2826 2962 8314 サンプドリア マルコ パローロ 59 OMF,DMF 1724 839 1756 3448 1679 3513 8640 ラツィオ LMF,RMF アンドレア ピルロ 62 OMF,DMF 1684 977 1923 3370 1955 3847 9172 クラウディオ マルキージオ 62 OMF,DMF 1849 875 1779 3699 1751 3558 9008 ユヴェントス LMF,RMF RWG マルコ ヴェラッティ 60 OMF,DMF 1524 1250 1619 3049 2501 3238 8788 パリ・サンジェルマン アンドレア ベルトラッチ 57 OMF,DMF 1716 870 1588 3433 1741 3176 8350 ミラン CF LMF,RMF ロベルト ソリアーノ 57 O・L・DMF,LWG 1724 804 1635 3448 1609 3270 8327 サンプドリア CF RMF アントニオ カンドレーヴァ 60 RWG,OMF,RMF 1821 810 1781 3643 1620 3562 8825 ラツィオ LMF LWG,DMF ステファン エル シャーラウィ 60 CF,LWG,LMF 1913 715 1736 3826 1430 3472 8728 モナコ RWG OMF,RMF チーロ インモービレ 60 CF 1982 648 1735 3965 1297 3471 8733 セビージャ グラツィアーノ ペッレ 59 CF 1853 730 1707 3707 1461 3414 8582 ハンプシャー・レッド フランコ バスケス 58 CF,OMF 1829 718 1703 3658 1436 3407 8501 パレルモ LWG,RWG,LMF,RMF 2016 S1 ジャンルイージ ブッフォン 63 GK 581 2913 1122 1162 5827 2245 9234 ユヴェントス サルヴァトーレ シリグ 60 GK 562 2810 1015 1125 5620 2030 8775 パリ・サンジェルマン アンドレア バルツァーリ 60 CB 887 2109 1393 1775 4219 2787 8781 ユヴェントス ジョルジョ キエッリーニ 61 CB 989 2106 1390 1980 4213 2781 8974 ユヴェントス LSB レオナルド ボヌッチ 62 CB 1042 2039 1421 2084 4078 2843 9005 ユヴェントス マッティア デ シーリオ 59 LSB,RSB 1404 1487 1428 2809 2975 2856 8640 ミラン CB,RMF マッテオ ダルミアン 60 L・RSB,L・RMF 1425 1509 1450 2850 3019 2901 8770 マン・レッド CB ルーカ アントネッリ 59 LSB,LMF 1353 1530 1462 2707 3060 2925 8692 ミラン DMF マルコ パローロ 60 OMF,DMF 1765 842 1757 3531 1684 3515 8730 ラツィオ LMF,RMF リッカルド モントリーヴォ 60 OMF,DMF 1609 1218 1557 3219 2437 3115 8771 ミラン LMF,RMF クラウディオ マルキージオ 62 OMF,DMF 1846 807 1790 3714 1757 3572 9043 ユヴェントス LMF,RMF RWG アントニオ カンドレーヴァ 61 OMF,RMF,RWG 1846 807 1790 3693 1615 3580 8888 ラツィオ LMF DMF,LWG ステファン エル シャーラウィ 60 LMF,CF,LWG 1938 702 1744 3876 1404 3488 8767 ローマ RWG OMF,RMF アレッサンドロ フロレンツィ 60 OMF,RMF・WG・SB 1793 1003 1578 3587 2006 3157 8750 ローマ LMF,LWG DMF,CF ロベルト ソリアーノ 58 O・L・DMF,LWG 1744 854 1654 3489 1708 3309 8506 サンプドリア CF RMF マノーロ ガッビアディーニ 58 1878 725 1669 3757 1451 3339 8547 ナスピオ エデル 59 RWG 1861 747 1722 3722 1494 3444 8660 インテル グラツィアーノ ペッレ 59 CF 1860 733 1731 3722 1467 3462 8651 ハンプシャー・レッド シモーネ ザザ 59 CF,RWG 1922 679 1720 3845 1359 3441 8645 ユヴェントス LWG,OMF ステファノ オカカ 58 CF 1816 764 1670 3632 1528 3340 8500 EURO 2016 ジャンルイージ ブッフォン 53 GK 1000(1100) 5311(5842) 1909(2100) 8220(9042) ユヴェントス サルヴァトーレ シリグ 49 GK 1011(1112) 4884(5372) 1715(1887) 7610(8371) パリ・サンジェルマン アンドレア バルツァーリ 51 1424(1567) 3777(4155) 2634(2897) 7835(8619) ユヴェントス ジョルジョ キエッリーニ 53 1560(1716) 3945(4340) 2711(2982) 8216(9038) ユヴェントス レオナルド ボヌッチ 53 1689(1858) 3783(4161) 2677(2945) 8149(8964) ユヴェントス マッティア デ シーリオ 50 2100(2311) 2704(2974) 2853(3138) 7657(8423) ミラン マッテオ ダルミアン 50 2014(2215) 2783(3061) 2868(3155) 7665(8431) マン・レッド マルコ パローロ 50 2843(3127) 1884(2072) 3000(3300) 7727(8499) ラツィオ アントニオ カンドレーヴァ 50 3130(3443) 1501(1651) 3107(3418) 7738(8512) ラツィオ ダニエレ デ ロッシ 51 DMF,CB 2811(3092) 2573(2830) 2548(2803) 7932(8725) ローマ LMF,RMF OMF チアーゴ モッタ 50 2865(3152) 2186(2405) 2605(2866) 7656(8423) パリ・サンジェルマン アレッサンドロ フロレンツィ 50 2939(3233) 1990(2189) 2811(3092) 7740(8514) ローマ エマヌエレ ジャッケリーニ 50 3027(3330) 1840(2024) 2793(3072) 7660(8426) ボローニャ フェデリコ ベルナルデスキ 48 3002(3302) 1420(1562) 2985(3284) 7407(8148) フィオレンティーナ ステファン エル シャーラウィ 49 3506(3857) 1223(1345) 2902(3192) 7631(8394) ローマ ロレンツォ インシーニェ 49 3522(3875) 1222(1344) 2890(3179) 7634(8398) ナスピオ チーロ インモービレ 49 3564(3920) 1211(1332) 2836(3120) 7611(8372) トリノ エデル 50 3547(3902) 1216(1338) 2940(3234) 7703(8474) インテル グラツィアーノ ペッレ 50 3548(3903) 1247(1372) 2910(3201) 7705(8476) ハンプシャー・レッド シモーネ ザザ 49 3532(3885) 1180(1298) 2905(3196) 7617(8379) ユヴェントス
https://w.atwiki.jp/changerowa/pages/213.html
「こんなものか」 燦々と降り注ぐ太陽。 百年ぶりに感じる、日光の暖かみ。 久しく味わう眩しさ。 それらに対するDIOの感想は、至って冷めたものだった。 バトルロワイアル開始直後にちょっぴり抱いた、日光浴への期待。 実際にやってみれば、思いの外何も感じない。 太陽をこの目で拝んでも、「ジョナサンの肉体なんだから当たり前だろう」という言葉しか浮かんでこない。 何故こんな結果になったのか。 当然自分の事なのだから、理由も分かっている。 結局のところ、これはDIOの肉体ではない。 あの船で死ぬ前の、ディオ・ブランドーと死闘を繰り広げたジョナサンの肉体だ。 だから日光を平気で浴びれても、感動も喜びもそこには無い。 首から下を乗っ取り、長い年月を掛けて馴染ませたDIOの身体であったら。 吸血鬼としてのDIOが真に太陽を克服し、日光を浴びても塵とならないのなら、心の底から充足感を得られただろう。 (俺が真に安心を得られるのは、お前から奪ったあの身体の時だけ、ということだな) 薄々分かっていたことだが、そう呟き太陽を睨みつける。 その横顔を、恍惚とした表情で見つめる少女が一人。 宇宙植物の花粉により、思考を大きく狂わされた甜花である。 (DIOさん…凄く、かっこいい……) 朝日を浴び、端正な顔がより一層輝いている。 愛する男の姿をこのままずっと見つめていたい、そんな蕩け切った思いで熱い視線をぶつける。 (何を考えてるんだろう…。て、甜花の事だと、嬉しいな……) 愛する男が、どんな時でも自分の事を考えていてくれる。 それだけで幸せのあまり死んでしまいそうだった。 実際には甜花の事など微塵も考えていないのだが、それを彼女が知る術はない。 定時放送が流れたのは、丁度そのタイミングだった。 「11人か…」 口に出すのは発表された死者の数。 妥当な人数だと思う。 DIOが遭遇した参加者は貨物船以外殺し合いに反対の者ばかりだった。 しかしヴァニラを筆頭に参加者を殺して回っている者も、それなりの数を揃えられているはず。 であれば10人以上の死者が出ても何ら驚きはない。 ご丁寧に顔写真付きで発表された死者の中に、DIOが知る者は精神・身体共に誰一人いなかった。 承太郎とヴァニラの生存に驚きは無い。 ジョースターのしぶとさは嫌という程に知っている。 最初の6時間すら生き延びられないような雑魚ならば、ジョースター家との因縁はもっと早くに断ち切れていただろう。 それに今回ばかりは承太郎に生きていてもらわねば少々困る。 ザ・ワールドが再び本来の力を取り戻すには、あの男のスタンドが必要となる。 ヴァニラに関しても、スタンドの強力さと本人の忠誠心を考えれば何の問題も無い。 きっと今も会場のどこかで、DIOの為に邪魔な参加者を殺して回っているのだろう。 続いて地図を取り出すと、空助の言った通り複数の施設の名が表示されている。 その中に一つ、DIOの知る名を見つけた。 ジョースター邸。ジョナサンとディオが青春を過ごした屋敷であり、長きに渡る因縁の始まりの場所。 ここに承太郎やヴァニラが向かう可能性はあるものの、存在するエリアが良くない。 スギモトとの戦闘で火事になった森のすぐ近くだ。 あれから大分時間が経っている。主催者がわざわざ消火活動でもしてない限り、ジョースター邸に近付くのは困難だ。 ただでさえジョナサンの身体になってから炎に対する忌避感が強くなっている気がするのに、燃え盛るジョースター邸という苦い記憶の再現のような光景に近付きたいはずがない。 石仮面が置いてある可能性を考えなくも無いが、幾らジョースター邸に関係するものとはいえ一施設に置くよりは、支給品として参加者に渡す可能性の方が高いだろう。 よって、ジョースター邸を目指す気は無し。 「ウキ!ウキキ!」 思考に耽るDIOへ、どこか誇らしげに話しかける猿。 元は意思を持った船であり今はオランウータンの肉体、しかも両方スタンド使いという異質な存在、貨物船である。 部下にチラリと視線をくれてやると、英和辞典で己の意思を伝えて来た。 『私はさっき参加者を一人殺しました。その証の名簿があります』 「ほう」 DIOの言った「ほう」には、複数の感情が込められていた。 甜花と戦極ドライバーを自分の元に運んできた以外には何の役にも立っていないと思っていたが、 流石に一人くらいは仕留められた事への僅かな感心。 殺せたのは一人だけであり他の者は仕留め損ねた癖に、何故か自慢気にしている無能さへの侮蔑。 それはそれとして、精神と肉体の組み合わせを記した名簿への興味。 以上が混ざり合った短い言葉への返答として、貨物船は名簿をDIOへ献上する。 「フム…では中で休みがてら確認するとしよう。甜花も疲れているだろう?」 「えっ、う、ううん…!DIOさんの為なら、これくらい全然平気、だよ…!」 「フフ、休める時に休んでおくのも大事な事だ。それに大切な君の体を壊す訳にはいかないからね」 「!?う、うん…!にへへ……DIOさん、そんなに甜花のこと……」 優しく囁かれ手を取ってやると、それだけであっさり言う事を聞く。 我ながら薄っぺらい言葉を口にしたものだと思いつつ、甜花に内心で冷めた思いを向ける。 恍惚の笑みで悶える少女が気付くはずはなく、ただ愛しい男に手を引かれるまま校舎内へ足を踏み入れた。 その後ろに貨物船が続き、PK学園はようやく静けさを取り戻した。 ○ 二人と一匹は校長室にして名簿の確認を行う事にした。 来客用のソファーにどっかりと腰を下ろし、足を組む。 好青年な外見のジョナサンには不釣り合いなポーズ。 だがDIOの醸し出すどこか妖艶な雰囲気が、他者の体であろうと違和感のないものになっている。 隣にはちょこんと座る甜花の姿。 早速名簿を開き、中身を確認する。 (成程……) 参加者全員に支給された名簿には無かった、誰の身体に入っているのか。 確かに記載されている。 己の名であるDIOの隣にはジョナサン・ジョースターの名が、大崎甜花の隣には大崎甘奈、 ついでに貨物船の隣にはフォーエバーと記されている。 当然、他の全ての参加者も同様だ。 承太郎の身体は燃堂力、ヴァニラの身体は立神あおいと言う日本人のものらしい。 どちらもDIOの知らない人間。 彼らが何の力も無い者か、それともスタンド使いのような能力を持っているかも不明。 名簿から知ることが出来るのは、精神と身体の組み合わせのみ。 各自に配られたプロフィールのように、顔写真や経歴などは記載されていない。 ざっと見回したが、ジョースター一行や他の部下の身体は無い。 ジョナサンの肉体が完璧に復元されている為、嘗て自分に楯突いた波紋戦士どもや従えていた屍人の身体もある可能性もゼロでは無いと考えていたが、それらも無し。 ただ一つだけ、少し気にかかる名があった。 (東方仗助…?) DIOの記憶に東方姓の日本人など存在しない。 どうやら犬飼ミチルという参加者の肉体らしいが、こちらも知らない人間。 特別珍しい名でも無い、なのにどうしてか引っ掛かる。 自分では無くジョナサンの知り合いであり、肉体の記憶に自分が引っ張られたのではと考えるも、ジョナサンが日本人と交流があったなどDIOは聞いた事がない。 何とも言えない気持ち悪さを感じ、ある可能性に気付いた。 (もしや……ジョースターの血統か?) スギモトとの最初の戦闘の後、会場のどこかにジョースターの肉体があると星形の痣の疼きで知った。 だがこの名簿を見る限り、承太郎とジョセフの肉体は参加者に与えられていない。 ということは、DIOの知らないジョースターの肉体があると言う事だ。 それが東方仗助かどうかは、現段階では判断が付かない。そもそも単なる気にし過ぎでないとも言い切れない。 実際に会って確かめる他ないだろう。 もしDIOの予想通りジョースターの人間ならば、確実に始末しておく必要がある。 例え肉体のみであろうと、ジョースター家の人間を生かす選択肢など存在しない。 (こんな所か…) 「甜花、君の知っている者の名は載っているかな?」 「う、うん、見てみるね」 DIOの知る名は他に無かったが、甜花はあるかもしれない。 役に立つ情報があるかどうかはともかく、一応確認させておいて損はないと考えての事だった。 ちなみに貨物船に見せても承太郎の名前に反応する程度で、新たな情報は得られないと判断した。 受け取った名簿に目を通すと、すぐに甜花の顔色が変わった。 「なんで……」 意図せず口から漏れる、震えた声。 血の気が引くというのはこういうのだろうと言わんばかりに、顔は蒼白と化している。 ガタガタと震える手、いや全身のせいで今にも名簿を落としそうだ。 彼女にとって何か好ましくない情報があった。それは確実。 その何かを確かめるべく、DIOは極めて優しい声色で落ち着かせる。 「なんで…千雪さんと…真乃ちゃんまで…それに…エボルトって……そんな……!」 「一度落ち着こうか甜花。今の君は良くない状態だ」 「DIOさん…で、でも…!千雪さん達が……!」 「君にとって何か良くない事が起きているのは分かる。だからまずは落ち着いて、それから話を聞かせてくれないか?私が君の力になる」 動揺の余り泣き出しそうな甜花と目を合わせ、そう告げた。 DIOの言葉は不思議と甜花の中に浸透し、頭を冷やしてくれる。 数回深呼吸をし、パニックになっていた自分をどうにか落ち着かせようとする。 その間、DIOが手を握っていてくれたのも功を為したのだろう。 愛する男のおかげで一先ず落ち着きを取り戻せた事に感謝の念を抱いた。 「落ち着いたかい?」 「う、うん…。ありがとう、DIOさん……」 気にしなくて良いと返し、ふと考える。 そう言えば自分は甜花に関してほんとんど知らない。 分かっている事と言えば、殺し合いであの仮面ライダー…戦兎と共に行動していたらしいくらい。 であれば丁度いいかもしれない。この機会に彼女が殺し合いで得た情報を聞き出すには。 安心させるように笑みを向けながら、口を開く。 「甜花、何故名簿を見て顔色を変えたのかも含めて、君の事をこのDIOにもっと教えてくれないか?」 ○ 「そうだったのか…」 話を聞き終えたDIOは神妙な顔で呟く。 参加者の身体として名簿に載っていた名、その中には甜花が良く知る人間が三人もいた。 大好きな双子の妹であり、今は甜花の仮の肉体となっている大崎甘奈。 甜花と同じユニット、アルストロメリアのメンバーで大崎姉妹が本当の姉のように慕っている桑山千雪。 同じく283プロ所属のアイドルであり、イルミネーションスターズのメンバーである櫻木真乃。 彼女達まで巻き込まれているのなら、甜花が取り乱すのも無理はない。 更に悪い事に、千雪の身体に入っている参加者の名はエボルト。 戦兎が話していた凶悪なエイリアンだ。 エボルトの事を説明した時、戦兎はどこか強張った顔になっていた。 それ程までに危険な男が千雪の身体で何をしでかすか、考えるだけでも恐ろしい。 真乃の身体に入っているダグバなる人物は知らないが、もしかしたらエボルト同様に殺し合いに乗っている可能性の高い者かもしれない。 ほんわかした雰囲気の、一緒に居るだけで心がぽかぽかする。そんな真乃の身体で参加者を殺して回っているなど、想像しただけで気絶しそうだ。 加えて二人とも、甘奈と同じく精神は参加していない。 彼女達もまた、ボンドルドに捕らえられているのだろうか。 もしそうなら、自分はどうしたら良いのか分からず、俯いてしまう。 悩める少女へDIOは、力強い声を返した。 「甜花、君が妹や友だちを心配する気持ちは良く分かった」 「うん……」 「そこで提案なのだが、彼女達の事は私に任せてくれないか?」 驚いたように顔を上げた甜花、その頬へ優しく手を当てると途端に顔が赤くなる。 潤んだ瞳に視線をぶつけ、彼女に「安心」を与えるべく言葉を紡ぐ。 「君の大切な人が捕らえられているなら、私が必ず救い出すと誓おう。無論、身体の方も危険な参加者の好きにはさせない」 「ほ、ほんと?本当に、なーちゃん達のこと、助けてくれるの…?」 「勿論だとも。君は私を愛してくれる。だから私もその愛に応えたいんだ」 「…DIOさんっ」 歓喜極まり思わず抱きついた甜花を、DIOも優しく抱きしめ返す。 愛しい男の腕の中で、甜花は思う。 どうして自分はもっと早く、この人と出会わなかったのだろうと。 強くて、優しくて、誰よりも信頼できる男の人。 そんな彼が甘奈達を助け出すと約束してくれたのだ。嬉しくないはずがない。 妹の事が心配だったけどもう大丈夫、きっとDIOが何とかしてくれる。 狂わされた頭で、根拠も無いのに甜花はそう確信した。 ○ 緩み切った顔で自分に抱きつく少女を一瞥し、手に入った情報を頭で纏める。 妹がどんな女の子なのだとかどれくらい大切に想っているかなど、そういった話はどうでも良かった。 が、それ以外の話は実に有益だ。 特に参加者がそれぞれ別の世界から参加しているというのは、流石に驚いた。 貨物船がDIOを一方的に知っていたのも、別の世界で自分の部下だったからなのかもしれない。 (新世界、か……) DIOと一戦交えた男、桐生戦兎。 驚くべき事に、何と奴は新たな世界を創造してみせたらしい。 甜花からの又聞きであり、大雑把な概要のみしか分からなかったが。 嘗て、地球外生命体のエボルトが月を吸収し消し去ったのが原因で、戦兎の住まう地球が滅びの危機に瀕した事があった。 そこで戦兎はエボルトを倒し、尚且つ地球を救う為の方法として大きな策に打って出る。それが新世界の創造。 戦兎が住まう地球を、別の宇宙に存在する、所謂平行世界の地球と融合し、その為のエネルギーにエボルトを利用して消滅させる。 そうする事で、10年前にエボルトが地球に現れなかったという歴史に上書きされた世界が生まれた。 もっと細かい条件や必要な物については、戦兎がそこまで詳しく説明した訳では無いので分かり様が無い。 実に興味を惹かれる話だ、『天国』という新たな世界を目指すDIOにとっては。 無論、戦兎の創った新世界と自分が目指す天国が同じものでない事は理解している。 必要となるものも、手順も、創造する動機も違う。 何よりDIOの言う天国とは極限まで高められた精神…スタンドにより時が加速し、宇宙を一巡させた果てに誕生する世界だ。 平行世界同士の融合という要素は含まれていない。 それでもより詳しく知るだけの価値はある。 ひょっとすると、自分がノートに記したのとは別の方法で天国に到達も可能なのではないか。 尤も現段階ではあくまで、そういう可能性もなくはないかもしれない程度であるが。 (甜花自身に纏わる話は実にくだらんが、他は価値のあるものだったな) 甜花はDIOが甘奈達を救ってくれると信じ切っているが、DIOにそんな気は微塵も無い。 大衆の前で尻を振って歌うアバズレどもを、何故このDIOがわざわざ気にかけてやらねばならないのか。 甘奈や真乃とか言う小娘の安否など知った事では無い。 但し千雪という女には興味がある。正確に言えば千雪の身体に入っている者に。 エボルト。新世界創造の話にも登場した侵略者である、戦兎の宿敵。 それが何と甜花が心配する女の身体に入り、参加者として会場のどこかにいる。 DIOとしては是非接触し、話をしてみたい。 甜花の齎した情報は、他にも興味深いものがあった。 承太郎の身体である燃堂という男は、先程学園から逃げた連中の内の一人らしい。 この手で殺したいと思っているスギモトや戦兎、電気を出す黄色い獣に比べれば大して重要ではない者の一人だが、まさかそいつの身体に承太郎が入っているのは予想外だ。 甜花から聞いた所、その燃堂は自分が殺し合いに巻き込まれているのも理解していない、呆れを通り越して哀れに感じる程の馬鹿。 一体全体どんな間抜け面の身体になっているのやらと、承太郎を嘲笑う。 更にもう一人、戦兎の仲間である柊ナナという少女。 確かメガネをかけた少年の身体になっていたが、その肉体の名は斉木楠雄だという。 (斉木楠雄。“斉木”……) 定時放送でボンドルドから紹介を受けた少年、斉木空助。 主催側の人間と同じ姓の持ち主が、参加者の肉体として存在する。 偶然な訳がない。間違いなくナナの肉体は、斉木空助と関係がある。 ひょっとすると、ナナ自身も斉木と何らかの関係性を持っているのかもしれない。 DIOの肉体はジョナサン、甜花の肉体は甘奈と、参加者に与えられた肉体はどれも何らかの強い繋がりがある。 貨物船とて、フォーエバーのスタンド能力が船に関係するという関連性があるのだ。 ナナに主催者に繋がる何かがある可能性は否定できない。 (フフッ、悪くない流れだ…) 戦兎達にこそ逃げられたものの、有益な情報が手に入ったのは喜ばしい。 加えて甜花が手元にいる以上、連中の方から懲りもせずDIOに戦いを挑んでくるだろう。 その時こそ自分に手傷を負わせたスギモトらを纏めて潰し、主催者と関りを持つと思われるナナを確保する。一石二鳥だ。 おもむろに白い小さな機械を取り出して眺める。 エターナルメモリ。DIOがこの地で得た新たな力。 変身した時の能力もさることながら、何より名前が気に入っている。 短い時の中でしか生きられないちっぽけな人間とは違う、人間を超越した吸血鬼として永遠を生きる、このDIOが持つに相応しい力だ。 甜花には見せていない、邪悪な本性を剥き出しにした笑みが自然と浮かんだ。 「ウキ…」 そんな主の姿に、貨物船は思う。 DIOが機嫌を良くしているのは良い。主が喜んでいると自分も嬉しいのだから。 しかしあの小娘、甜花にばかり構っているのはどうも面白くない。 カエルみたいな奴を殺し、名簿を手に入れたのは自分。 甜花とメロンみたいな鎧を纏う道具を献上したのも自分。 なのにDIOは先程から甜花にばかり構い、自分は空気のような扱いだ。 最初からDIOに忠誠を誓っていたのではない、支給品で洗脳されたに過ぎない小娘が、何故自分よりああもDIOと親しくするのか。 貨物船は沸々と苛立ちを募らせていた。 【E-2 街 PK学園高校/朝】 【DIO@ジョジョの奇妙な冒険】 [身体]:ジョナサン・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険 [状態]:両腕火傷、体中に痺れ(時間経過で回復中)、疲労(中)、火に対する忌避感 [装備]:ロストドライバー+T2エターナルメモリ@仮面ライダーW [道具]:基本支給品、ジークの脊髄液入りのワイン@進撃の巨人、精神と身体の組み合わせ名簿@オリジナル [思考・状況]基本方針:勝利して支配する 1:貨物船と甜花を従えておく。 2:どちらも裏切るような真似をしたら殺す。 3:役立たないと判断した場合も殺す。 4:学園から逃げた連中への苛立ち。次に出会えば借りは返す。(特にスギモト、戦兎、黄色い獣(善逸))。 5:元の身体はともかく、石仮面で人間はやめておきたい。 6:アイスがいるではないか……探す。 7:承太郎と会えば時を止められるだろうが、今向かうべきではない。 8:ジョースターの肉体を持つ参加者に警戒。東方仗助の肉体を持つ犬飼ミチルか? 9:エボルト、柊ナナに興味。 10:仮面ライダー…中々使えるな。 11:もしこの場所でも天国に到達できるなら……。 [備考] ※参戦時期は承太郎との戦いでハイになる前。 ※ザ・ワールドは出せますが時間停止は出来ません。 ただし、スタンドの影響でジョナサンの『ザ・パッション』が使える か も。 ※肉体、及び服装はディオ戦の時のジョナサンです。 ※スタンドは他人にも可視可能で、スタンド以外の干渉も受けます。 ※ジョナサンの肉体なので波紋は使えますが、肝心の呼吸法を理解していません。 が、身体が覚えてるのでもしかしたら簡単なものぐらいならできるかもしれません。 ※肉体の波長は近くなければ何処かにいる程度にしか認識できません。 ※貨物船の能力を分身だと考えています。 ※T2エターナルメモリに適合しました。変身後の姿はブルーフレアになります。 【貨物船@うろ覚えで振り返る承太郎の奇妙な冒険】 [身体]:フォーエバー@ジョジョの奇妙な冒険 [状態]:疲労(小)、ダメージ(大)、ジークの脊髄液入りのワインを摂取、酒酔い(多少は醒めた) [装備]:英和辞典@現実 [道具]:基本支給品、ワイングラス [思考・状況]基本方針:DIOのためになるように行動 1:DIOの命令に従う。 2:漫画を置いて行ってしまったのが少し残念。 3:甜花が気に入らない。 [備考] ※スタンドの像はフォーエバーのものとそっくりな姿になっています。 ※一応知性はあるようです。 ※DIOがした嘘のワインの説明を信じています。 【大崎甜花@アイドルマスターシャイニーカラーズ】 [身体]:大崎甘奈@アイドルマスターシャイニーカラーズ [状態]:疲労(大)、DIOへの愛(極大) [装備]:戦極ドライバー+メロンロックシード+メロンエナジーロックシード@仮面ライダー鎧武 [道具]:基本支給品 [思考・状況]基本方針:DIOさんの為に頑張る 1:DIOさん大好き♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥ 2:戦兎さん……どうしてDIOさんに酷いことするの……? 3:ナナちゃんと燃堂さんも……酷いよ……。 4:なーちゃん達はDIOさんが助けてくれる……良かった……。 5:千雪さんと、真乃ちゃんまで……。 [備考] ※自分のランダム支給品が仮面ライダーに変身するものだと知りました。 ※参戦時期は後続の書き手にお任せします。 ※参加者が並行世界から集められている可能性を知りました。 ※ホレダンの花の花粉@ToLOVEるダークネスによりDIOへの激しい愛情を抱いています。 どれくらい効果が継続するかは後続の書き手にお任せします。 71 カルマ 投下順に読む 73 適者生存 時系列順に読む 42 Dのステージ/迷いを捨てた火花が今、散った DIO 84 楽園に背く 大崎甜花 貨物船
https://w.atwiki.jp/changerowa/pages/260.html
← ◆◆ 話は少し遡る。 「私が出会ってきた方々についての話は以上です。えっと、これでよろしかったでしょうか?」 「………なるほどな」 甜花と貨物船と別れた後、DIOは姉畑をPK学園の体育館の裏へと連れて来た。 ここでDIOは姉畑のこれまでの動向についてゆっくりと尋ねていた。 この場所を選んだのは単純に他に人が来そうにないからだ。 話をするにあたり、DIOは一応エターナルへの変身を解除している。 顔を見せた方が相手も話しやすいとの判断だ。 ベルトは腰に巻いたまま、メモリは手に持ったままだが。 姉畑はDIOに対し自分の知る限りの情報をほとんど話した。 自分の名前もこの時話した。 姉畑の出会ってきた者達の中にはDIOも既に知る者達がいた。 炎を操る白髪の少女、スギモトは自分がここで最初に会った者だ。 どうも、自分から逃れた後奴はこの姉畑支遁という人物に出会っていたらしい。 放送で名前が呼ばれた鳥束零太等も名前を把握していた存在だ。 姉畑は彼の話をする時にその死を、特に身体のケロロ軍曹についてどこか惜しそうな様子であった。 DIOから見ても、姉畑は大方先ほどの貨物船に対する仕打ちと同じようなことを試みて逃がしたのだろうという予測はつく。 鳥束は既に死亡しているためDIOは特に気に留めず、話題も続けさせない。 電撃を放つ黄色の獣についてはDIOも出会っていたが、その名がピカチュウであることは初めて知った。 姉畑が知っていたのはたまたま身体のプロフィールを拾ったかららしい。 ついでに、そのプロフィールも渡してもらった。 その中身が誰なのかについては後で貨物船経由で入手した組み合わせ名簿でまた確認しようとも思った。 それを姉畑に教えるつもりはないが。 ただ、このピカチュウについての話をしている時が、姉畑の声にもっとも弾みがついていたように感じた。 そして、DIOの知らない者としては、額に痣がある少年の情報が新たに得られた。 この少年はどうも殺し合いに乗っているらしく、戦闘力も高そうだったとのことだ。 最初は杉元とも友好そうだったが、自分のついて行けない間に急に争いを始めていたとのことだ。 その際のいざこざで姉畑は杉元達とははぐれてしまったとのことだ。 他に、巨大なトビウオに乗って空を飛んでいたらしい。 少年についての話では、姉畑はトビウオについて特に力説していたがDIOにとってはそこは別にどうでもよかった。 (…スギモトは自分を不死身だと叫んでいたが、吸血鬼と同じように肉体が再生すると考えるべきか?) 姉畑の話では、スギモトは痣の少年と争いになったらしく、いつの間にか銃で撃たれたらしく頬に穴が開き、血だらけになっていたそうだ。 しかし、DIOとこの学園で再会した時、そんな様子は見受けられなかった。 姉畑の話が本当なら、いつの間にか再生したことになる。 初戦での『不死身』という宣言は、本物だったという可能性が思い浮かぶ。 もしかしたら、これまで与えたダメージ等も、再会時には全て綺麗さっぱり消えているかもしれない。 もし次もまた会えたのなら、その点をよく確認しておこう、とDIOは思った。 「……あ、あの、お話はこれで終わりでよろしいのでしょうか?私としては早く探したりとかしに行きたいのですが…」 DIOが思案している中、姉畑が早くこの場から去りたいという態度をあまり隠さずに終わりを急かす。 その理由が動物達を探しに行きたいということはDIOにも分かっている。 自分は動物学者だと先に言ったのは姉畑の方からだ。 今の話の中でも、情報の伝達の最中で動物達への愛情を隠す様子はなかった。 「…………えっと、できるならばでいいのですが…その……離れる前に、あのお猿さんについてなんですが…その…」 姉畑は口をもごもごとさせながら何か頼みたいといった様子を見せる。 言いたいこととしては、あのオランウータンともっとふれあいたいとか、そのあたりだろう。 はっきりと言わないのは、ナニをしでかすつもりなのかDIOも分かっていることを察しているからだろう。 それでも口に出そうとしているのは、まだ諦め切れていないからだろう。 「…………確か、アネハタと言ったな。お前は、人は何のために生きるのか考えたことはあるか?」 「え?」 唐突に、何の脈絡もなくDIOがそんなことを聞いてきた。 「そ、そんなこと急に言われましても…」 姉畑はその質問に対して回答はできない。 「私が思うに、人というものは『恐怖』を克服するために生きているのだと思う」 相手の回答を待たずに、DIOは畳み掛けるように話を続ける。 「『人間は誰でも不安や恐怖を克服して安心を得るために生きている』、これが私の考えだ。名声を手に入れる、金もうけをする、結婚したり友人を作ったりする…他にも様々あるが、今回は一先ずここまでだ」 「えっと、それがどうかしたのですか?」 「何も私に『恐怖』があるという話がしたいのではない。ただ、今のお前は大いに『恐怖』してる、と私は思っている」 姉畑は確かに、今にでもこの場から離れたそうに、怯えている風に見える。 「お前に一体何の『不安や恐怖』があるのかは知らんが、それを克服したいとは思わないか?」 「どうやってですか?」 「例えば…このDIOに一生仕える、とかだ」 それが、DIOがこの場で本題として話そうとしたことだ。 姉畑支遁は一般社会において『悪』に分類される人間だ。 じゃなければ網走監獄に収監されるなんてことはない。 DIOはそこまでの情報を入手しているわけではないが、姉畑が分類されるべき属性には流石に気付いていた。 人への迷惑も顧みず、自分勝手な行動で周囲に被害を及ぼすその性質。 状況が悪くなれば他人のせいにもしてしまうようなその精神性。 そして、自分という恐怖の象徴に屈しかけているように見える言動、これらの要素から説得により従えられる可能性はまだあると判断していた。 「アネハタ、お前は自分の欲望を制御できないのだろう?」 「い、いや…それは、その…」 「私はそれを責めるつもりはない。むしろ、何を恥じる必要がある?」 DIOは姉畑に対し甘い言葉をかけようとする。 性癖を理解できないのは変わらないが、そもそもそんなことをする必要は無い。 理解している『フリ』ができればいいのだ。 相手は自分のことを分かってくれていると思い込んだ者は、その相手の言うことを疑いづらくなる。 それもまた人を支配し利用するための方法の一つだ。 「何も心配することはない。お前は私たちの戦いを見ていたのだろう?ならば、私の力は分かっているはずだ。その私の下にいれば、お前の目的も果たせるのではないのか?」 「し、しかし…」 「安心するんだ。甜花達が怖いのなら、私の方から説得しよう。そして、話し合おう。君は、好きに生きていいんだ」 「ですが…ですが…」 DIOの言葉に姉畑は迷うかの様子を見せる。 ◇ その提案の魅力を、姉畑にも一応理解はできている。 DIOが白い鎧を身に纏って戦う様子は目撃している。 何か黄色い人型の何か(スタンド)を出現させ、操っていた場面も見ている。 そして何より、DIO自身のカリスマにも引き付けられている。 彼に従えば安心が手に入ることを理屈抜きに理解させられる。 だが… 「……駄目です。……駄目なんです」 「ん?」 「許されるわけが、ありません…!」 そう呻いたとたん、姉畑は両手でこめかみを抑えながら顔を下に向け、うずくまる。 「この私が、許されようだなんて、あなたみたいな人と一緒に行けるなんて、そんなことッ!あってはならないッ!!」 まるで発作を起こしたかのように、姉畑は叫び、地面に転がる。 いや、実際に気が触れているかのようだった。 「私はッ!穢してしまったんだッ!汚らわしいッ!!許されないッ!!あってはならないんだあッ!!」 そこにDIOがいるのを忘れてしまったかのように姉畑は叫び続ける。 じたばたと駄々をこねる子供のようだ。 姉畑は確かにDIOのカリスマの影響を受けている。 ひょっとしたらクリムの身体の雌の部分の反応もあるかもしれない。 しかしここにおいては、そのカリスマが逆効果となっているようだった。 姉畑支遁は確かに自然の生き物たちを自分の欲望のままに穢してきた。 だが、それが良くないことだということは心の中のどこかで分かっていた。 だから後になって穢した存在ごとなかったことにしようとして、殺してしまう。 姉畑は少し前、確かに欲望を満たすことができた。 しかし、その相手…スタンドのストレングスは何処かへと消えてしまった。 その行方を姉畑は知らない。 まだ生きているかもしれないと思っている。 だから、一刻も早く自分の罪の象徴の残るその動物(スタンド)を殺しに行きたいという思いが現れ始めていた。 彼の中の更なる狂気が、発散されないままその精神を蝕み、溜め込まれていた。 何より、姉畑がこの世で一番嫌いなものは『自分自身』だ。 動物たちを犯すのも、醜い自分が自然と結びつき、一つになれた気になるからだ。 しかし事が終わればその感覚もなくなり、後には罪の証だけが残るため姉畑は凶行に走るようになる。 姉畑のこの異常な願望を満たすのは、それこそヒグマのような強大な動物のようなものだろう。 ここにいる姉畑はそのヒグマとはまだ出会っていない。 何にせよ、姉畑はその自己嫌悪の感情がかなり強くなっている。 DIOに魅力を感じたことは、自分は彼に相応しくないという気持ちを新たに出現させる。 好きに生きても良いと言われても、それを自分自身が否定したくなる。 それにより姉畑の精神には更に負荷がかかる。 DIOの言う通りにしたい自分と、それが許されるわけがないと主張する自分で、板挟みになる。 「……もういい、十分に分かった」 姉畑が暴れる様子をしばらく眺めていたDIOが口を開いた。 その声音は、先ほどの甘く囁くものから、とても冷たいものに変わっていた。 「…………ハッ!お、お見苦しいところをお見せして………ブベッ!!」 冷静さをある程度取り戻した姉畑が起き上がろうとしたその瞬間、 DIOのスタンド、ザ・ワールドの拳が姉畑の顔面を打った。 ◆ 姉畑に対し誘いをかけたのは、本気ではなかった。 ただ何となく、試してみただけだった。 そして今、姉畑を従えるのは不可能、もしくは従えたとしても自分にとって不利益が生じると判断した。 そもそもの話として、姉畑はこれまでの様子から動物を見ただけで欲望を暴走させる模様だ。 たとえ自分の下に置いたとしても、こちらの指示を聞かずに暴走されてかなり迷惑だ。 肉の芽とかがあれば制御できるかもしれないが、今のDIOの身体は吸血鬼ではない。 今の面接で少しでもDIOにとって利益になるところを見せていれば気まぐれに生かしてやろうとはほんの少しだけ思っていた。 その場合は甜花や貨物船とはどう折り合いをつけさせるか考えなければいけなかったかもしれないが、その必要もない。 こんな精神の不安定具合が酷い者を自分の下に置いておく理由はない。 ここで秘密裏に始末する方向に舵を切っていた。 まあ、どちらかと言えば初めからそのつもりでこの場所に連れてきていた。 本当に殺すかどうかの判断は、少し話をしてから決めても遅くはないと思っただけだ。 こうなる可能性の方が高いことは予想がついていた。 「お前はもはやこのDIOに利用される価値はない。ここで死ぬしかないな」 「そ、そんな…」 先ほど殴られたことで端正なクリムの身体の顔立ちも歪み、鼻血も流れ出ている。 痛みにより涙目にもなっている。 突然のことによるショックで立ち上がるのも困難なようだ。 「だが、お前にはもう少し聞きたいことがある」 「え?」 しかしDIOはすぐに姉畑に止めを刺そうとしなかった。 「私が聞きたいのはスギモトについての情報だ。貴様、まだ何かを隠しているな?」 DIOは姉畑の持つ情報をまだ引き出しきれていないと考えていた。 杉元佐一についての話をしていた時の姉畑の様子からそう判断した。 (ど、ど、どうしましょう…!) 姉畑がDIOに教えなかった情報、それは杉元が金塊の行方を示す刺青人皮を狙う者なのではないかということについてだ。 この話を出すと、自分もその刺青人皮が彫られた網走監獄の脱獄囚であることに触れないわけにはいかなくなる。 ただの動物学者で通している以上、囚人であったことを隠して話しても、ならば何故に刺青のことを知っているんだという話になってしまう。 自分が囚人であったことは隠したかった。 金塊についても、話題に出してそれこそ居場所を知っていると思われて拷問とかされるのではという発想がまた出てきていた。 そのために杉元佐一についての考察は隠して話していたのだが、それを察知されてしまった。 「どうした?質問は既に拷問に変わっているぞ?」 姉畑がうろたえて次の言葉を出せない間に、DIOはザ・ワールドの手を静かに地面についている姉畑の右手の方に持っていく。 そして、人差し指を力任せにへし折った。 「ギャアアアアアアアァッ!!?痛いッ!痛いよぉッ!!」 「まだ喋ってもらうことがあるからな。歯は折らないでやる」 突然指を折られた痛みにより姉畑は絶叫した。 後ろ向きにしりもちをつき、折れた指を抑える。 (こ、このままじゃ殺される…!) 骨が折れたことによる激しい痛みにより、姉畑は自分の現状にようやく理解が追いつく。 カリスマに酔いかけていた脳も醒めていく。 だが、自分が目の前の男に敵わないという実感は変わらない。 ドリルクラッシャーで抵抗を試みても、それは無駄な行いだと思わされる"凄味"を感じさせられる。 姉畑の中で絶望が急激に大きくなっていく。 (嫌だ…私にはまだやるべきことがある!死にたくない!あの子たちについても、まだ知らないことがたくさんなんだ!!) だがこの絶望的な状況でも、姉畑支遁はまだ自身の生存を諦めたくなかった。 先ほどは魅力を感じていたDIOについても、この男のために死にたいとも思っていない。 どうせ死ぬなら、自分の愛する自然と一体になってから死にたい。 それに、ここで出会ってきた未知の動物たちについてもまだ仲良くなれていない。 生態等、興味深いこともたくさんだ。 そのためにもここは生き延びなければならない。 ◇ そして、姉畑はあることを思いつく。 彼の手元にはまだ支給品が残っている。 それは、我妻善逸が森の中で忘れていって自分が拾った物だ。 それらを使えばこの場から逃走することができるのではという考えが浮かぶ。 ただし、それが成功する確率はかなり低い。 以前メギドボムを喰らった時に飲んだ青いポーションも、半信半疑のまま飲んだが効果は説明書通りに現れた。 だが今使うことを思いついた支給品は、それこそ説明書通りなら、むしろ失敗しここで死ぬ可能性の方がずっと高い。 しかし、姉畑はその支給品をここで使おうと考えていた。 生き残りたいのはもちろんだが、それは姉畑の願望をある程度叶えることができるかもしれないものなのだ。 今まで使わなかったのは、効果が現れる成功率の低さ故だ。 例え効果が現れたとしても、この状況を脱することのできる力を手に入れられるとは限らない。 だがどうせここで死ぬのなら、せめて僅かでも成功する可能性に賭けようと思った。 ここで殺されるとしても、後からせめてそれを試してみるべきだったという後悔もしたくない。 「う、うわああああああああああッ!!」 そして、姉畑は行動に出た。 元から装備していた状態にあったドリルクラッシャーを手に持ち、ガンモードにし、銃口をDIOに向けようとする。 『無駄ァ!』 しかし、発砲されるよりも先にザ・ワールドが動く。 ザ・ワールドはドリルクラッシャーを構えようとした姉畑の右腕に向けてチョップを振り下ろす。 手首から肘にかけての部分、前腕内部の骨が折られる。 ドリルクラッシャーもその場に落としてしまう。 「あああああああああああああッ!!」 「無駄無駄。お前が何をしようと、このDIOのザ・ワールドの力の前では無駄なんだ。そして、その下らない企みもお見通しだ!」 姉畑は再び痛みによる悲鳴を上げる。 だが、それとは別に左腕を動かしていた。 姉畑の左腕は、横においたデイパックの中に伸びていた。 姉畑はそもそも、ドリルクラッシャーを発砲するつもりはなかった。 第一、先ほど右手の人差し指を折られているため引き金は元から引けない。 姉畑は右腕に注意を引きつけ、その隙に左手で横に置いたデイパックから新たに何かを取り出そうとしていた。 腕を折られるまで予測できていたわけではないが、それでも何とか痛みに耐えてこの場を脱する物を出そうとした。 しかし、その浅知恵もDIOの前では無駄だ。 右と同時に左も動かしていたことなど、すぐに気付く。 DIOはザ・ワールドを操作し、デイパックの中に伸びる姉畑の左手も潰そうとその部分に向かってそのスタンドの拳を叩きつけようとした。 ◆ それが、DIOに本当の意味での一瞬の隙を作らせることになる。 「グアァ!?」 DIOの体に、一瞬電気が走った。 体が痺れ、手に持っていたエターナルメモリも地面に落とす。 電撃を浴びたのはDIO自身ではない。 姉畑の近くにいたザ・ワールドに対してだ。 姉畑の左手を中心に、電気が破裂するかのように周りに広がり、ザ・ワールドもそれに触れた。 そのフィードバックにより体が痺れ、DIOの動きが一瞬止まる。 この状況を生み出した物、その名は黄チュチュゼリー。 ハイラルに生息するエレキチュチュという魔物から採れる物体だ。 他の種類のチュチュゼリーに電気を流して作ることもできる。 この物体は叩いて衝撃を与える等すると破裂し、周囲に電気を発生させる性質を持つ。 このゼリーは元々、我妻善逸への支給品の一つであった。 ついでに言えば、5つセットで支給され、その内1つが今回破裂した。 姉畑はこれを取り出そうとした。 そして左手と共にデイパックの外に出た瞬間、そこにザ・ワールドの拳が飛んできた。 その衝撃により破裂し、周囲の空間に電撃を走らせた。 そして、姉畑の身体であるクリムヴェールはほとんどの属性攻撃を無効化する。 ゼリーがまき散らした電気にも痺れない。 スタンドのパンチによる衝撃は、完全に防げたわけではないが、このゼリーがクッションとなりある程度和らげた。 全く痛くないわけではないが左手はまだ無事だ。 右腕の骨が折れたことによる激痛に耐えなければならないという条件はある。 だが、DIOが痺れている隙に姉畑は動くことができるようになった。 そして、姉畑がここにおいて生き残るために使おうと思った、本命の支給品はこの黄チュチュゼリーではない。 これはあくまで時間を作るためのものだ。 DIOが痺れで動けなくなったかどうかを確かめる時間も惜しんで、姉畑はさらにその『本命』を取り出す。 同時に、青いポーションも一つ取り出し、すぐさま飲み干す。 それによりまずは折れた右腕を治し痛みを和らげる。 「貴様…!よくもこのDIOに…!」 姉畑が青いポーションを飲んだ隙に、DIOの体から痺れが消える。 それと同時に姉畑に対し強い怒りを抱く。 黄チュチュゼリーは確かに電気を発生させるが、それは決して強いものではない。 以前DIOが浴びたピカチュウの10万ボルトにも及ばない。 ダメージは受けるが、大きくはない。 感電による拘束時間もすぐに過ぎる。 だが、DIOはすぐに姉畑を攻撃できたわけではなかった。 このゼリーによる電撃は、浴びると手に持っていたものをほぼ確実に落とす。 それにより自分が落としたメモリに一瞬視線が誘導された。 更にその隙に、姉畑は本命の支給品…二重丸の模様がたくさんついたリンゴのような果実を手に持つ。 そして、その果実にかぶりついた。 「死ねィ!」 ザ・ワールドが姉畑に対し拳を構える。 情報を抜き出すための拷問はもう止めだ。 怒りに任せ、ここで確実に殺すために拳を振るおうとした。 『ゴクン』 それと同時に、姉畑は口に含んだ果実を飲み込んだ。 そして、怪物が生まれた。 ◆◆ 「なっ!?」 突如視界に入ってきた巨大な物体に、DIOは驚いて思わずザ・ワールドの拳を止めた。 そこに現れたのは、一頭の象だった。 背中から天使を生やした象だった。 それは、姉畑支遁が変化したものだった。 動きを止められたのは、急な巨大化による体積の膨張に押されてのこともあっただろう。 まさかの展開に、流石のDIOも思考が追い付かない。 こんなことができるとは、クリムヴェールのプロフィールにも書いていなかった。 支給品を使ってこの姿になったという考えが浮かぶのにも少し時間がかかった。 ここで姉畑支遁が食したリンゴのような果実の正体、その名は『SMILE』。 シーザー・クラウンという男が開発した「人造悪魔の実」だ。 この果実の特徴、それは食した者に体の一部を何らかの動物の姿に変身させる能力を与えることだ。 ただし、このSMILEには多くのリスクがある。 1つは、何の動物の能力が得られるかは食べてみないと分からないこと、 そして変身させられる部位を選べず、動物の部分もどんな形で現れるか分からないことだ。 その変身能力も、自分の意思で解除できないのがほとんどだ。 次に、食べても必ず能力が得られるわけではないというリスクがある。 SMILEを食べた者達の中で、能力を発現させることができるのは10人に1人、全体の10%だけだ。 そして、最大のリスクとして、食べても能力者になれなかった者は、笑顔以外の表情を失いどれだけ悲しくても笑うことしかできなくなってしまう。 これらのリスクにより姉畑はこの果実をすぐに食べることはしなかった。 自然の動物たちと一つになりたい姉畑にとって、たとえ一部だけでも動物になれるこの果実の効果には大いに興味があった。 だが、その低い成功確率や、失敗した時のデメリットの大きさ故にこれまでは怖気づいて食べなかった。 しかし今、命の危機に瀕したため、どうせ死ぬのならとこのSMILEを食べる踏ん切りがついた。 そして、姉畑は賭けに勝った。 また、クリムヴェールの身体は属性攻撃が効かないが、薬が効かないわけではない。 女体化の薬を飲んで自分の体の雄の部分を一時的に消したこともある。 今回のSMILEについても、幸運に当たりを引き、その効果を発現させることができた。 「やった…やりました…!うおおおおおおッ!!」 『パオオオオオオオッ!!』 姉畑は想定以上の結果が得られたことに喜ぶ。 しかし今はそれにかまけている暇はない。 確立のことを考えたら狂喜乱舞したい気分だが、そんなことはまだできない。 この場を生き延びるために次に何をすべきなのか脳をフル回転させて判断する。 象も姉畑の意思に応えるように鳴き声を上げる。 下半身が変貌した象がその長い鼻を横に大きく振りかぶる。 そして、DIOに向かって力任せに薙ぎ払う。 同時に、背中の姉畑は変身と同時に手に持ったデイパックから黄チュチュゼリーをさらに二つ取り出す。 そして自分から見て左横の辺りにいたザ・ワールドに向けゼリーを投げ捨てる。 「くっ!」 ここで、DIOの行動は制限を受けた。 先に攻撃を仕掛けることができなかった。 まず一つとして、姉畑の下半身が変貌した象の容姿に驚愕してしまったことが効いた。 相手は、象の牙にあたる部分から足が生えていた。 そして、鼻先の穴の部分は男性・女性両方の性器が現れていた。 DIOはこれらを見てしまった。 その衝撃的な姿から、DIOの思考が復帰する時間も延ばされた。 次に、姉畑が黄チュチュゼリーをザ・ワールドに向けてバラまいたこと、 気付いた時には、姉畑の象とザ・ワールドの間にまでゼリーは落下していた。 そのため、ここで一瞬、このままザ・ワールドで攻撃したらこのゼリーを破壊し、再び電気を浴びることを考えてしまう。 実際に、姉畑はそれを狙ってゼリーを落とした。 結果として、DIOの方の行動が姉畑より一瞬遅れた。 そして、象が振りかぶった鼻が、DIOにたどり着いた。 「クゥアッ!!」 DIOはそれに対し、自身の、ジョナサンの身体での拳で象の鼻に対抗しようとした。 ザ・ワールドは約3メートル先の相手のすぐ近くにいるが、これで攻撃しても、鼻による攻撃も同時に防御する暇もなく自身にたどり着く。 エターナルへの変身はメモリを電気の痺れのせいで落としてすぐにはできない。 自分の身を守るのにここで頼れるのは、因縁の宿敵の膂力だけだった。 DIOはジョナサンの腕で迫りくる象の鼻を受け止めようとする。 「ウグアァッ!!」 しかし、その試みは失敗した。 象の鼻は1トンの物体を持ち上げることができるとも言われている。 体重1~2トンのサイを転がしたという事例もあるらしい。 そんな象の本気の振りかぶりはたとえジョナサンの身体でも受け止めきれなかった。 防げる可能性があるとすれば、ザ・ワールドを近くに戻しておくか、エターナルへの変身は解除しないでいることか、 もしくは波紋の呼吸をもっと使えるように練習しておくべきだったか。 いずれにせよ、今回は姉畑の象の鼻による攻撃を受けてしまった。 DIOは横方向に吹っ飛ばされてしまう。 姉畑の横にいたザ・ワールドもそれに引っ張られる。 一応自分の体で受け止めることを選んでいたため、多少の防御はできている。 ザ・ワールドをすぐ自分の側に戻し、地面への激突に際する衝撃も和らげる。 象の攻撃によるダメージは少な目に抑えた。 しかし、DIOと姉畑の距離が離されたという結果が生まれてしまった。 その隙に姉畑は象の鼻を操作し、地面に落ちていたドリルクラッシャーを絡みとって拾い、背中の自分に渡させる。 他に落とした2つのチュチュゼリーは方向転換の際に蹴とばしてしまい破裂させてしまう。 象の部分もクリムの身体が変化したもののため発生する電気には無反応だ。 食べかけのSMILEも地面に落ちたままだ。 それらにも、DIOにも目もくれず、姉畑はこの場から走って逃亡を始めた。 「ぐっ…!」 DIOは何とかすぐに起き上がる。 ただ、追いかけるにはタイムラグが生じた。 DIOには落としたエターナルメモリを拾う必要があった。 その時間差が、姉畑に次の行動を許してしまった。 ◆ 姉畑支遁は確かに体育館裏の場所から逃げられた。 しかし彼はすぐにはこのPK学園から出なかった。 彼にはこの中でまだやりたいことがあった。 DIOが連れていた二匹のオランウータン、その片割れを攫うことが次の目的だった。 自分が穢した方を殺すために探したい。 そのためには、同じ容姿をしたもう片方も必要だと考えていた。 もう片方は、自分が何もしてないにも関わらず尻の辺りを手で押さえてもだえ苦しんでいた。 見た目がそっくりなこともあり、二匹になんらかの繋がりがあるのかは確かだ。 これもまた、電気を出すピカチュウのような不思議な生態の一つなのかもしれない。 殺してあげたい気持ちと、特殊な生態を持っていそうなことの興味深さ、これらのために姉畑はもう片方のオランウータン…貨物船の本体を求めた。 そのためにまず、姉畑は最初の校門付近の場所に戻った。 あの甜花と呼ばれた少女と貨物船と呼ばれた彼が今も同じ場所にいるかどうかは分からない。 ただ、一縷の望みを持ってこの場所に戻ってきた。 そして、結果的にこの場所に戻ってきたのは正解であった。 PK学園の保健室は、窓の外から校門が見える描写が『斉木楠雄のΨ難』原作にある。 このシーンでは斉木楠雄が保健室内の窓から校門近くに停まった救急車を見ている。 単行本第1巻収録の第2χ、ページ数で言えば50ページを参照だ。 つまり、校門付近から保健室の窓の位置を見つけることは可能と考えられる。 ◆◆◆◆ 場面は元に戻る。 姉畑支遁が校門付近にたどり着くと同時に、大崎甜花は保健室の窓を開けてしまったのだ。 それを、姉畑は見つけてしまった。 最初のDIOの指示から、この赤みがかかった髪色をした少女が貨物船と呼ばれたオランウータンと一緒にいることは姉畑にも分かっていた。 「キ、ヤッ…!」 「そこにいるのですねッ!!」 そして姉畑は甜花のいる方に向かってガンモードのドリルクラッシャーを発砲した。 ただこれは甜花自身を狙ったわけではない。 姉畑が狙ったのは保健室の窓ガラスだ。 銃口から放たれた光弾が甜花の開けた方の隣のガラスを破壊する。 「キャア!!」 破壊されたガラスの破片が甜花にも襲いかかる。 とっさに腕で顔を守ったが、破片の一部が服や守り切れなかった皮膚を少し切り裂く。 そのまま窓が破壊されたことによる衝撃を大きく受ける。 それに押されて甜花は横方向に倒れてしまう。 「ウキャア!?」 突然の銃声、破壊された窓ガラス、倒れた甜花、 貨物船も異常事態を察する。 驚いたまま、尻の痛みに耐えながら窓の方へと近づいてしまう。 その判断が、彼の命運を分ける。 「見つけましたよッ!!」 ガラスの無くなった窓の外から、先に異物の付いた象の鼻が侵入してきた。 その長い鼻に、貨物船は体を絡めとられる。 それにより、彼は強引に開けた窓から引っ張り出される。 その際、窓枠にもぶつかり貨物船の頭に小さいこぶができる。 「ハア…ハア…ようやく君を手に入れられました!」 「ウキャアア!ウキヤアアアッ!!」 望むものを手に入れられた姉畑は興奮した様子を見せる。 貨物船は、目の前の相手に混乱・恐怖する。 姉畑の何に驚愕しているかは今更記す必要はないだろう。甜花と大体同じだ。 そして、相手が自分に何をしようと思いこの長い鼻で自分を拘束しているのか、おぞましい想像をさせられてしまう。 貨物船の中の恐怖が大きくなり、必死でもがこうとする。 だが、象の鼻の力は強く、オランウータンの腕力でもほどき切れない。 スタンドを出そうにも、消耗した体力・精神力では難しい。 「さあ!行きますよ!」 貨物船を鼻で締め付けながら、姉畑は象と共に方向転換し、校門の方へと向き直り、走り出す。 「待て!」 そんな折にDIOがようやく戻ってきて姿を見せた。 その姿は、白い仮面ライダーエターナルのものだ。 先ほどのこともあり念のために変身していた。 だが、姉畑はその呼び止めも無視してそのまま校門から出ようとする。 「ウ、ウッキャア!」 だが、DIOが姿を見せたことは貨物船の心にわずかながらの安心を与えた。 しかし、長い鼻による拘束が解けないことには変わりない。 距離が空いているため、すぐには追いつけない。 象の最大時速は40km/h、人間よりも早い。 今すぐにそこまで加速できているわけではないが、象が体の大きさの割に素早いのは確かだ。 エターナルの走力は100mを3秒、時速に直せば120km/hであるが、すぐさまその速度に加速できるわけでもない。 それに、保健室の窓が割れていることによりそちらにも一瞬注意が向く。 その間に姉畑は貨物船を連れて校内からの脱出を完了させてしまう。 けれども、DIOが姿を見せたことは貨物船に自分が何をするべきか、それを考える余裕を与えた。 彼もまた脳をフル回転させ、DIOのためにこの状況で何ができるのかを考えさせる。 そして、貨物船は1つの結論に至った。 「ウキアァ!!」 貨物船は所持していた英和辞典を開き、その最後の方のページを破いた。 そしてそれを丸めてDIOのいる方へと投げた。 この行動の意味が届くかどうかはDIO次第だ。 それを理解してもらえることを祈りながら貨物船は姉畑によりPK学園の外に連れ出された。 ◆◆ 貨物船が投げた英和辞典から破かれたページをDIOは拾って開く。 彼が投げたのは、辞典の『W』から始まる単語の載るページが数枚だった。 その意味を、DIOは察する。 貨物船が伝えたかったこと、それは「自分をワインの毒の効果で化け物にしてくれ」ということだ。 DIOは、いまだにあのワインの嘘の説明を信じている貨物船に呆れ果てる。 本人にとっちゃこれまで迷惑をかけたお詫びも兼ね、自分の命と引き換えに姉畑支遁を倒したいということなのだろう。 実際には、そんなことはできないにも関わらず。 自分がこれ以上DIOに役立てることは、もはやこれしかないのだと判断しているのだろう。 DIOがそれに対して何もできない以上、貨物船のこの選択は愚かなものであると、DIOは思う。 あまりにも無意味なメッセージだった。 むしろ、これに気をとられたことで姉畑がさらに逃げるだけの時間ができてしまった。 そして、DIOはやがて体をわなわなと震わせ始める。 彼の中で、怒りの感情がかなり大きく渦巻いていく。 「………クソォ!!このDIOが…こんな屈辱を…!!」 まさかあんな異常性癖の変態に出し抜かれるなど、思っていなかった。 貨物船は自分の指示を無視した愚か者であるが、自分の部下であるという立場はまだあった。 自分の所有物であったのだ。 それを、あのアネハタと名乗ったふざけた天使は、このDIOから奪い取っていった。 他人から何かを奪い取るのは、いつだって勝利者だけが持つ権利だ。 その権利を持つことができるのは自分、いつだって支配者のこのDIOだけのはずだった。 だがあの天使は、あろうことかその自分から"物"を奪って行った。 よりにもよって、かなりの格下として見下していた者から奪われたのだ。 それによる屈辱は大きい。 決して許しがたいものだ。 DIOに落ち度があるとしたら、油断していたことだろう。 しかしそれをDIOの精神は認めたくない。 この屈辱による怒りは、身を焼き焦がすほど熱くなる。 DIOはあの姉畑支遁を自分の手で確実に殺すと、決めていた。 「あ、あの……DIOさん…」 DIOが貨物船の残したページを見ながら怒りを煮えたぎらせている中、やがて甜花がやってきた。 甜花は保健室内で起き上がった後、外にDIOがいることに気づき慌てて外に出た。 一応、ガラスの破片とかでこれ以上甘奈の身体が傷つくことを恐れて壊れた窓からでなく、正面玄関から出た。 そのせいで少し 甜花はおどおどとした様子でDIOに話しかけようとする。 DIOの機嫌が現在最悪なことは彼女も察しているようだ。 「……甜花、奴を殺しにいくぞ。一緒に来てくれるな?」 「……………うん」 ノーマルコミュニケーション。 甜花は、今のDIOの回答に顔を曇らせた。 今のDIOは、冷静さが欠落し始めている。 姉畑支遁への怒りが感情の大部分を占めている。 そのことを、甜花は察してしまった。 今の彼が自分のことを考えてくれていないことを悲しく思った。 ただでさえ姉畑支遁のこれまでの行いにより精神は大きなショックを受けているのに、そこに愛する人が自分を見てくれていないことは甜花の心をさらに強く痛める。 (……やっぱり、全部全部、あの人のせいだ…!) そして、甜花の中の悲しみは次第に怒りへ、そして殺意へと変換されていく。 あの理解不能な自称動物学者な変態、 デビハム以上に天使の身体でいられることを許せない相手、 しまいには象の化け物になった上に、甘奈の身体に切り傷を作る原因となった。 その男、姉畑支遁への怒りがDIOと同等と言っても差し支えないほどに強くなっていた。 DIOと甜花は、たまたまであるがその考えがシンクロした。 二人とも同じ相手への敵意を強く持ち、PK学園からの移動を開始した。 ◆◆ ここで少し、明言しておきたいことがある。 貨物船の治療の最中、甜花はホレダンの花粉で洗脳されているのにも関わらず戦兎のことを気にしてしまった。 そして、貨物船に対しても少し関心が向いた。 それまではDIOが彼女の全てであったはずなのにだ。 これについては一応、簡単な仮説が立てられる。 ホレダンの花粉の効果が時間経過によって少し弱まったかもしれないのだ。 ただ、弱まっただけで効果が無くなったわけではない。 これまでの愛が9~10だとするならば、7~8に変わった程度だ。 他に考えられる可能性としては、姉畑支遁の凶行を見てしまったことによる多大な精神的ショックも考えられる。 ストレスが、愛を抑制できた可能性を、ここで挙げておきたい。 まあ、この仮説については少々無理矢理な感じもまだするが。 ◇ そして最後に、彼女が聞いた気がする『声』についてだ。 この『声』は彼女に対し、「違和感に気づいて」と訴えているようだ。 さて、ここで一つ、『問題』を提起したいと思う。 この問題は、これまでの話と大きく矛盾する可能性を高く孕んでいる。 今後、話が進むにつれてこの問題の息が続くかどうかも不明瞭だ。 今後は無視してもらっても構わない。 それでも、思い立った以上記さずにはいられない。 それでは、書かせていただきます。 彼女が聞いた『声』、これを発したのは、 『姉』と『妹』どちらなのだろうか? 【E-2 街 PK学園高校(校門付近)/昼】 【DIO@ジョジョの奇妙な冒険】 [身体]:ジョナサン・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険 [状態]:エターナルに変身中、両腕火傷、体中に痺れ(少し再発)、疲労(大)、火に対する忌避感、姉畑支遁への屈辱と怒り(大)、ダメージ(中) [装備]:ロストドライバー+T2エターナルメモリ@仮面ライダーW [道具]:基本支給品、ジークの脊髄液入りのワイン@進撃の巨人、精神と身体の組み合わせ名簿@オリジナル、クリムヴェールのプロフィール、ピカチュウのプロフィール [思考・状況]基本方針:勝利して支配する 1:アネハタを殺しに行く 2:甜花を従えておく。 3:裏切るような真似をしたら殺す。 4:役立たないと判断した場合も殺す。 5:貨物船はもはやどうでもいい。どうせ役に立たない、助かるまい 6:学園から逃げた連中への苛立ち。次に出会えば借りは返す。(特にスギモト、戦兎、ピカチュウ(善逸))。 7:元の身体はともかく、石仮面で人間はやめておきたい。 8:アイスがいるではないか……探す。 9:承太郎と会えば時を止められるだろうが、今向かうべきではない。 10:ジョースターの肉体を持つ参加者に警戒。東方仗助の肉体を持つ犬飼ミチルか? 11:エボルト、柊ナナに興味。 12:仮面ライダー…中々使えるな。 13:デビハムと少女(しのぶ)は…次に会う事があったら話をすれば良いか。 14:もしこの場所でも天国に到達できるなら……。 [備考] ※参戦時期は承太郎との戦いでハイになる前。 ※ザ・ワールドは出せますが時間停止は出来ません。 ただし、スタンドの影響でジョナサンの『ザ・パッション』が使える か も。 ※肉体、及び服装はディオ戦の時のジョナサンです。 ※スタンドは他人にも可視可能で、スタンド以外の干渉も受けます。 ※ジョナサンの肉体なので波紋は使えますが、肝心の呼吸法を理解していません。 が、身体が覚えてるのでもしかしたら簡単なものぐらいならできるかもしれません。 ※肉体の波長は近くなければ何処かにいる程度にしか認識できません。 ※貨物船の能力を分身だと考えています。 ※T2エターナルメモリに適合しました。変身後の姿はブルーフレアになります。 ※主催者が世界と時間を自由に行き来出来ると考えています。 ※杉元佐一の肉体が文字通り不死身のものである可能性を考えています。 【大崎甜花@アイドルマスターシャイニーカラーズ】 [身体]:大崎甘奈@アイドルマスターシャイニーカラーズ [状態]:疲労(大)、胴体にダメージ(小)、DIOへの愛(大)、姉畑への恐怖と嫌悪感と怒り(大)、服や体にいくつかの切り傷、戦兎に対し複雑な気持ち [装備]:戦極ドライバー+メロンロックシード+メロンエナジーロックシード@仮面ライダー鎧武、PK学園の女生徒用制服@斉木楠雄のΨ難 [道具]:基本支給品、甘奈の衣服と下着 [思考・状況]基本方針:DIOさんの為に頑張る 1:DIOさん大好き♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥ 2:あの人(姉畑支遁)……絶対に許さない…! 3:戦兎さん…DIOさんに酷いことしたのに……この気持ちは何で…? 4:ナナちゃんと燃堂さんも……酷いよ……。 5:なーちゃん達はDIOさんが助けてくれる……良かった……。 6:千雪さんと、真乃ちゃんまで……。 7:貨物船って……何でそんな名前に…?とりあえず、助けに行くことになるの…? [備考] ※自分のランダム支給品が仮面ライダーに変身するものだと知りました。 ※参戦時期は後続の書き手にお任せします。 ※参加者が並行世界から集められている可能性を知りました。 ※ホレダンの花の花粉@ToLOVEるダークネスによりDIOへの激しい愛情を抱いています。 どれくらい効果が継続するかは後続の書き手にお任せします。 【E-2 街/昼】 【貨物船@うろ覚えで振り返る承太郎の奇妙な冒険】 [身体]:フォーエバー@ジョジョの奇妙な冒険 [状態]:疲労(中)、ダメージ(大)、右肩に刺し傷(包帯が巻かれている)、肛門裂傷、精神疲労(大)、ジークの脊髄液入りのワインを摂取、酒酔い(大分醒めた)、身動きが取れない、死の覚悟 [装備]:英和辞典@現実 [道具]:基本支給品、ワイングラス [思考・状況]基本方針:DIOのためになるように行動 1:DIOが自分のメッセージに気づくことを祈る。 2:漫画を置いて行ってしまったのが少し残念。 3:甜花が気に入らなかったが… 4:尻が痛すぎる。 [備考] ※スタンドの像はフォーエバーのものとそっくりな姿になっています。 ※一応知性はあるようです。 ※DIOがした嘘のワインの説明を信じています。 ※英和辞典の後ろの方のページが数ページ破れています。 【姉畑支遁@ゴールデンカムイ】 [身体]:クリムヴェール@異種族レビュアーズ [状態]:疲労(大)、未知の動物の存在への興奮、下半身露出、DIOへの恐怖(大)、必死、象のSMILE、貨物船を象の鼻で拘束中 [装備]:ドリルクラッシャー@仮面ライダービルド、逸れる指輪(ディフレクション・リング)@オーバーロード [道具]:基本支給品×2(我妻善逸の分を含む)、青いポーション×1@オーバーロード、黄チュチュゼリー×2@ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド [思考・状況] 基本方針:色んな生き物と交わってみたい 1:DIOから逃げる。 2:この貨物船という名のオランウータンで消えた方をおびき寄せたい。 3:貨物船についても生態(もう片方(スタンド)とダメージを共有している点)が興味深い、もっと知りたい、仲良くなりたい 4:ピカチュウや巨大なトビウオと交わりたい。他の生き物も探してみる。 5:あの少女(杉元)は私の入れ墨を狙う人間なのでしょうか? 6:何故網走監獄がここに? 7:人殺しはやりたくないんですが… [備考] ※網走監獄を脱獄後、谷垣源次郎一行と出会うよりも前から参戦です。 ※ピカチュウのプロフィールを確認しました。 ※象のSMILEとしての姿は、象の背中から上半身が生えている、足が象の牙にあたる鼻の付け根の横の部分から生えている、象の左右の鼻の穴がそれぞれ左が男性器・右が女性器になっています。 ※どの方角に向かって逃げているかは後続の書き手にお任せします。 ※PK学園の体育館の近くのどこかに食べかけのSMILEが落ちています。 【黄チュチュゼリー@ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド】 エレキチュチュを倒すことで入手できるアイテム。 しびれるほどではないが常にビリビリしている。 叩くなどして衝撃を与えると破裂して周囲に電気を発生させる。 炎属性の物に当てて赤チュチュゼリーに、氷属性の物に当てて白チュチュゼリーにしたりすること等もできる。 魔物素材であるため、特定の虫と混ぜて調理すれば薬を作ることも可能。 ここにおいては計5つ支給。 元は我妻善逸への支給品。 【SMILE@ONE PIECE】 シーザー・クラウンによって開発された人造の悪魔の実。 シーザーがパンクハザードで作る「SAD」という名の薬品を、ドレスローザの地下工場でトンタッタ族の栽培能力を利用して生産されている。 トンタッタ族曰く、とても不自然な果実らしい。 食べると体の一部を動物のものに変身させることが出来る能力を得られる。 ただし、その成功確率は10人食べて1人だけである。 成功したとしても、どんな動物の能力を得られるか、どこを変身させることができるようになるかもランダムである。 場合によってはかなり悲惨な見た目になる例もある。 失敗を引いた場合、笑い以外の感情を永遠に失ってしまう。 元は我妻善逸への支給品。 95 Broken Sky -Dance With Me- 投下順に読む 97 我妻善逸はでんきネズミのユメをみるか!? 時系列順に読む 99 疑似体験Ψエンスフィクション 84 楽園に背く DIO 103 Lが呼ぶほうへ/矛盾に脳を惑わして 大崎甜花 貨物船 姉畑支遁
https://w.atwiki.jp/japanesehiphop/pages/1583.html
Format Title Artist Label Model Number Release Press 12 RADIO RADIO(promo) MIC BANDITZ ESPIONAGE,CUTTING EDGE,AVEX CTJT-6077 2002/--/-- - Side Track Title Produce A 1 RADIO RADIO dj ajapai B 2 RADIO RADIO(Inst) dj ajapai PERTAIN CD The Visitorz(CCCD)
https://w.atwiki.jp/pspprogram/pages/30.html
pcm出力初期化割り当て int sceAudioChReserve(int channel, int samplecount, int format); pcm出力解放 int sceAudioChRelease(int channel); pcmデータ出力関数 int sceAudioOutput(int channel, int vol, void *buf); int sceAudioOutputBlocking(int channel, int vol, void *buf); int sceAudioOutputPanned(int channel, int leftvol, int rightvol, void *buffer); int sceAudioOutputPannedBlocking(int channel, int leftvol, int rightvol, void *buffer); 設定変更関係 int sceAudioGetChannelRestLen(int channel);//Get count of unplayed samples remaining. int sceAudioSetChannelDataLen(int channel, int samplecount); //多分reserveの第2引数の変更 int sceAudioChangeChannelConfig(int channel, int format); //多分reserveの第3引数の事後変更 int sceAudioChangeChannelVolume(int channel, int leftvol, int rightvol); //多分ボリューム変更 サンプル wavファイルから再生
https://w.atwiki.jp/nuxyonsosso/pages/143.html
デザイン プロフィール 能力ジョブ ステータス スキル 関連人物 デザイン プロフィール 種族 ゴヌッシーモョ族 性別 男 年齢 75歳(人間換算) 身長 172cm ジョブ からくり士 属性 地 思想 混沌・中庸 武器 機械、工具、杖 一人称 わし、私 二人称 お前、貴様 好きなもの 発明、孫 苦手なもの ソォンソォンォポポヌッヌゥ 趣味 発明、からくりのメンテナンス、孫の絵の鑑賞 “からくり”の権威として有名な技術者。 木と金属と魔法の産物である「機械」の発明と扱いに長け、その技術力は世界最高峰。 引く手数多だが、問題は本人の性格。頑固な職人気質をしている上に無愛想で偏屈なのだ。扱いが難しすぎて並の交渉者は敵わず身を引いてしまう。 人里離れた美しきムョスペォ山間に工房を建て、孫のポェゾヌビョルンと2人で住んでいる。 集中すると長時間飲まず食わずで作業をするため、広い敷地内でお互い音信不通になることが多々あるが、仲が悪い訳ではない。むしろとても仲がいい。 じじいも孫が大好きだし孫もじじいが大好き。 万能発明家であるソォンソォンォポポヌッヌゥ博士をライバル視しているが、肝心のソォンソォンォポポヌッヌゥ博士は全く気にせず仲間だと思って接してくる。すっごい気に食わない。 能力 ジョブ 【からくり士】 ステータス 腕力 体力 魔力 器用 敏捷 幸運 D C B A+ D D+ スキル 名称 ランク 詳細 関連人物 【ポェゾヌビョルン】 何よりも大切な孫。 偏屈で頑固で面倒じじいもかわいい孫には甘い。
https://w.atwiki.jp/nicoratch/pages/840.html
概要 CMD STUDIO 2Aは非常にポータブルな4チャンネルオーディオインターフェース搭載、デュアルデッキDJ MIDIコントローラーです。Deckadance* LEの利用が可能で、繊細なジョグホイールは非常にリアルな使用感を味わえます。フェーダー搭載の2chミキサー部はクロスフェーダー、3バンドEQ、CUE、ライブラリーナビゲーションやトラックロードボタンも搭載しております。4chのUSBオーディオインターフェースは24bitコンバーターを有し、WindowsやMac OSでのオペレーションシステム下において、超低レイテンシーを実現します。ボタンにはバックライトがついており、暗い環境での使用にも大変便利です。電源はUSBバスパワーとなっており、別途電源を確保する必要がありません。非常に互換性の高く、様々なMIDIソフトウェアでご使用頂けます。非常にスリムで計量、持ち運びにも便利です。PCベースでのご使用であれば、此処までローコストで携帯性の良いDJコントローラーは他にありません。 ※現在ベリンガー社のオーディオインターフェース/MIDIコントローラー等に関しましては、USB3.0との互換性が御座いません。ご検討の際はお手持ちのPCを必ずご確認を下さい。 スペック表 ■DJコントローラー ■2デッキ ■4ch USBオーディオインターフェース機能内蔵 ■DJソフトウェアDecadance 付属(ダウンロード対応) ■45mmフェーダーとジョグホイールを装備 ■3バンドEQ、キュー機能搭載 ■携帯に便利なスリムな卓上デザイン ■サイズ :264.2x193.5x42.5mm 0.88kg 価格 10000円前後(新品) CMD Studio 2A http //www.hotlinemusic.co.jp/products/cmd-studio-2a.html
https://w.atwiki.jp/jojotoho_row/pages/328.html
紅蒼の双つ星 ― ばいばいベイビィ ― ②⇐その②より ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽ 『空条承太郎』 【午前】C-3 紅魔館 地下の大図書館 翼竜に案内されたその空間は、巨大な蔵書部屋……所謂『図書館』のような場所だった。 地下へ地下へと階段を下った先に、日光などひとつとして届かない。 しかし完全なる『闇』というわけでもない。点々と灯された照明器具が、承太郎の足元を照らしている。 環境。戦闘は充分すぎるほどに『可能』。広さも申し分ナシ。かび臭さと埃っぽさは多少気になるが、戦闘に影響もナシ。 装備。頼りになるミニ八卦路は直接触れているとマズイようなので紙に入れている。問題ナシ。 体調。霊夢やF・Fとの戦闘による負傷や疲労はあったが、この館に来るまでには既に万全にしている。問題ナシ。 懸念。敵はDIOひとりとは限らない。霊夢たちがディエゴを抑えているので奴の乱入は考えにくいが、警戒は必要。 歩みを止め、前方を鋭く見据える。そこは図書館のおよそ中心部。 長テーブルに高く積み上げられた本の山々が、視界を多少悪くしている。 その本の山の隙間で、何かが微かに動いた。 冷たい感覚が、一層研ぎ澄まされる。 「知っているか? この幻想郷には……いや、“元”の世界の幻想郷と言ったほうが正しいか。 『博麗大結界』なる、常識と非常識の結界が張られているそうだ。 百数十年前に張られたそれは博麗の巫女と八雲紫、及びその眷属が代々管理している、とか」 落ち着いた、しかし癇に障る声が静かに響いた。 ああ……本当に最低最悪の気分だ。承太郎は心の中で唾を吐く。 50日という遥か長い旅路の末に、3人という戦友の犠牲あって死ぬ思いで倒したはずの。 承太郎の感覚ではつい数時間前に粉々にしたばかりのはずの。 ―――吸血鬼DIOの声だった。 「外の世界に住む我々が『科学の文化』を持っているのに対し、幻想郷では『精神・魔法の文化』が発達しているようだ。 この互いに決して相容れない、全く対極にある文化が故に……常識は常識足りえ、非常識は非常識足りえる境界が存在する」 反吐が出るほどに憎らしい相手の声を聞くことの、何と『無駄』なことか。 しかし承太郎は決してそれ以上DIOに近づかない。 周りの気配は目の前の男ひとり。この部屋に居る者は自分とDIOの2名のみだ。 「一般の論で言えば……我々が持つスタンドは本来『幻想』にあるべき産物なのだろうな。 となれば、スタンド使いは幻想郷に住まう資格を有し、またこの世界のバランスを著しく傾けたりはしないのだろう。 そうでなくとも私は吸血鬼。幻想郷に跋扈する妖怪どもとどこが違うのか? きっと本質は同じなのかもな……」 エジプトで対峙した時のような迫力や傲慢さは今のコイツからは感じられない。 むしろ真逆。実に優雅で紳士的な態度が見て取れた。 「何が言いてえ」 しかし承太郎は男が被る仮面に騙されない。 コイツの本性などとうに知れているし、ひと皮剥がせば簡単にその攻撃性が露わになるだろう。 かくして承太郎はここで初めて男との『会話』を成立させた。 幻想郷の由来や今昔になどさして興味はない。今、自分の心にあるのは――― 「俺はもう一度てめえを倒しに来ただけだ。殺し合いだとか、幻想郷がどうのだとかは関係ねえぜ。 てめえが妖怪たちと同じ本質だと? 面白い冗談だぜ。“元”人間の吸血鬼気取りが」 闘争。 すなわち今の承太郎にはそれしかない。 この男には100年も前から大勢の人間があらゆる物を貸していた。 幾里もの果て、エジプトでDIOを倒しそれらは取り返したものだと思ったが……。 「フフ……クックック………ッ! “元”人間……そのとおりだ。 この紅魔館の主レミリア・スカーレットやらとは違い、私には払拭できない『人間』としての過去がある。 100年前、石仮面により吸血鬼となったが……根本を言えば私と、そしてお前も人間なのだ。どれだけ強かろうがな」 ガタリと椅子を動かす音と共に、男は本を閉じて立ち上がった。 一挙一挙が絵になるような優雅さ。だが承太郎からすればその全てが苛立ちを覚えさせる。 嫌味なほどに“黄”をてらった服に、黄金の髪。この薄暗い部屋でも目立つなりをしている。 男はこちらを向くことなく横顔のまま、その余裕を崩さずに語りを続けた。 「幻想郷縁起という書物によれば、ここ幻想郷にはそんな“元”人間は案外珍しくないらしい。 亡霊の姫として幽霊の管理をする者。仙人に憧れるも成り損ないの邪仙に堕ちた者。 天界に住まうことを許された天人くずれの者。大昔に人間をやめた大魔法使いの尼僧である者。 ……どうだ? 彼女らに比べればこの私の方がよっぽど『常識的』だと思わないか?」 言いながら男はコツコツとゆっくり音を立てながら、テーブルを大きく回りこんでくる。 承太郎はそれを細い目つきでじっと凝視しながら構え、しかし会話を絶やすことはしない。 「俺はてめえと世間話をしに来たワケじゃねえ。 それに人間をやめてから今まで多くの命を奪ってきたてめえが常識的だとは全く思わねえぜ」 「……幻想郷にはひとつ、『妖怪は人間を襲うもの』『人間は妖怪を退治するもの』という規律があるそうだ。 いやそれは規律というよりかは、それこそ『常識』であるらしいのだがね。 そしてもうひとつ。『外の世界から迷い込んだ人間を、妖怪は喰ってもいい』という規律もあるらしい。 さて、承太郎? さっきも言ったように私は吸血鬼でありスタンド使い。非常識世界である幻想郷に生きる『資格』はあると思うんだ。 そんな私が“もし”幻想郷に来たとしたら……『喰われる側』かね? それとも……『喰う側』になると思うかね? 『襲う側』か? はたまた『退治する側』か? 私は『人間』か? 『妖怪』か? 首から上は元の『吸血鬼』だが、ボディはかつて戦った男のもの……『人間』だ。その『境界線』はどこにある? この首のキズかね?」 長々と、だが決して早口にはせず。男はゆったりとその疑問を承太郎にぶつけてきた。 会話でも楽しんでいるつもりなのか。ここは街角カフェの一席ではない。殺し合いという名の広大な円卓だというのに。 彼が丁度言い終える頃には足も止め、いつの間にか男と承太郎を結ぶ直線距離は10メートル。間を遮る物は何もない。 ―――二人の男が、決闘者のように視線を交えた。 「……てめえが吸血鬼だろうが妖怪だろうが関係ねえ。だが敢えて、てめえの言い分で言わせてもらうなら…… てめえはこれから『裁かれる側』で、俺が『裁く側』だということだッ!」 承太郎が眼光を光らせ、『スタープラチナ』を発現させるッ! 「わかりやすいな承太郎ッ! だがひとつ訂正させてもらうならッ! オレが『上に立つ側』でありッ! キサマはオレに蟻のごとく『踏み潰される側』だということよッ!!!」 空気が震った。吹くはずのない風が鳴いた。 これまでの紳士な態度も一変。とうとうDIOがその本性を剥き出しにしたッ! 同時に現われた『ザ・ワールド』が、両者の間に激しい火花を打ち散らかすッ! 今にも激闘が繰り広げられそうなピリピリした空気の中、数瞬の間が流れる……! その“間”に、DIOは再び落ち着いた――しかし深淵のような殺気の声で口を開いた。 「オレがさっきから何を言いたいかというと、だ。……承太郎ォ? ジャパンという黄金の国は実に面白いなァ~~? お前もこの国に住んでいるのなら少しは愛着ぐらいあるのだろう? オレ自身、この幻想郷も結構気に入っているぞ。空気も美味いし、その名を示すとおり幻想的な世界だ」 今度は承太郎、返答はしない。 ただただ敵との間合いを見測り、射程距離ギリギリの境界に立つ。 「だが、この幻想郷のルールという危ういバランスには大いに疑問を抱いている。こんなシステムがあと何十年続く? 現にここでは、幾度となく幻想郷を揺るがした異変が起こり続けているという。オレからすれば穴だらけの欠陥システムよ。 だったらいっそ……一度壊してしまえば良いのだ。そう、幻想郷の住民を全て滅ぼすことのように。 丁度―――このバトルロワイヤルという殺戮遊戯の行いのように」 しかしいつにも増して喋る野郎だ、と承太郎は思う。 まるで幻想郷博士だ。そんなにこの世界が気に入ったというのか。 「『もしも』この幻想郷の万物を創りだした神がいるとして……やはりその神もこの世界のシステムには疑問を感じたのではないか? だからバトルロワイヤルを開催したのか? あるいは―――あの主催どもがその万物の神なのかもしれんなァ?」 DIOが横歩きに移動すると同時に、承太郎もそれに伴って歩く。 互いに視線は外さず、スタンドの構えは解かず。 決して必要以上に近づかず、離れ過ぎず。 近距離スタンド同士の応酬では『間合い』が大事だ。このDIOに対しては特に。 「神がそれを望むというなら……このDIOも加担してやらんでもない。 ……『皆殺し』という形でな。もっとも、オレにはオレで『別の目的』は存在するが」 もう一度DIOは足を止め、再び膠着状態が始まった。 焦らすような溜めの後、DIOはペロリとその妖艶な唇を舐め―――牙を見せて一言だけ放った。 「賢者の一角『八雲紫』は既にこのオレの掌中に落ちた。『博麗霊夢』もすぐにディエゴが刈り取ってくれるだろう」 ―――ピクリ――― 承太郎の眉が一瞬だけ僅かにつりあがり、反応を示した。 その際を狙ったかのように、DIOがここで初めて前へと動き出すッ! (時を止められる―――!) 直感的に承太郎は感知した。 その息詰まる一瞬の狭間で、考えを流動的に巡らせる。 DIOは果たして“どこまで知っている”? 目の前の男はこの空条承太郎の『能力』について知っているのか、知らないのか。 つまりは承太郎がかつてDIOとの一騎打ちの結果、土壇場で『時間停止能力』をモノにした事実をだ。 もしもDIOが、承太郎のスタープラチナは時を止められることを知らないとしたら、戦いは途端に承太郎有利の展開になる。 時を止めてハイテンションになったDIOがノコノコ近づいて来たところを、時止め返しで逆にブッ飛ばしてやればいいだけだ。 しかし承太郎が時間を止められることをDIOが『知っていた』としたら……? 可能性は幾つも考えられる。 DIOはディエゴと組んでいる。会場中の情報を掌握しているであろうディエゴから承太郎の能力の片鱗でも聞いた可能性。 承太郎の能力を知っている他の参加者と既に接触し、間接的に聞いた可能性。 DIOが『呼ばれた』時間軸が、承太郎が時止めを取得した後だという可能性。 ―――考えても答えは出せない問いだ。ならば承太郎のやることはシンプル。 (DIOが何を策していようと……俺が止められる『2秒』という時間の中でスタープラチナをブチかますだけだ) そしてDIOの唇が、その名を呟いた――― 『 世 界 ―― ザ ・ ワ ー ル ド ―― 』 ピキン。 無音の世界で、鉄糸が切れたような音が錯覚した。 瞬間、拡がる『DIOの世界』。 静止したように冷たかった図書館が、完全に停止する。 動く者はDIOのみ。承太郎は―――停止したままDIOを迎える。 (まだだ……まだ時を止め返すな。ヤローがもっと近づかねえと意味がねえ) 獲物を狙う獅子のように。 草葉の陰で潜む蛇のように。 承太郎は、勝利を確信できる『最高の瞬間』を狙って、あえて動かない。 敵の喉笛は……まだ遠い。 「聞こえているのだろう? なあ承太郎」 鬱陶しい声がこの世界に響くその間、承太郎にはDIOの走りがスローモーションのように見えた。 「狸寝入りの真似事はよせ……。お前が止まった世界で動けることは知っている。 果たして『何秒』動けるんだ? 2秒か? 3秒か? まさか5秒も動けないよなあ……?」 エジプトの時と似たようなこと聞きやがって……。 承太郎は表情には出さずとも、心で毒づく。 だが、そんなことを聞いてくるということはつまり、DIOは知らないのか? ……俺が何秒動けるのかを! 「もしお前が長い時間を動けるのなら……お前という男を侮ってうっかり近づきすぎるのは賢い者のすることではない」 まさか……と、承太郎は予感する。 DIOが足を止めた。まだスタープラチナの射程距離外だ。 そして奴がニタリとこれ以上なく傲岸に、楽しそうに笑い、懐から取り出した『ソレ』は――― 「そこで承太郎! きさまが何秒動けようと関係のない処刑を思いついた……」 ズラァーと手の中に収められた『ソレ』は、銀色に輝くナイフ。おそらく厨房かどこかで失敬した物だろう。 かつて行われたその悪どさ極まるやり方を、まさかいきなり使ってくるとは思わなかった。 意表を突かれた、という思いは拭いきれない。 「逃れられるならやってみろッ! 喰らえィッ!!!」 ザ・ワールド――『世界』から繰り広げられた、無数の雨あられ。 銀色の五月雨のように承太郎に降り注ぐナイフの全てが、その目前で取り囲むようにピタリと止まった。 (『動いて』弾き落とすか……!? いや、この数は……ッ! いくら止まった時の中で動けようと、すでにDIOの術中。全てのナイフを振り払うまでには至らないだろう。 あの時のようにマンガ雑誌を制服に仕込むことなどしていない。 かつて霊夢が咲夜に対抗した時はまな板を使ったものだが、それを承太郎は知らない。 「ん~~? 動かないのか承太郎? それとも実は動けないの か な ? すぐに動いてナイフを振り落とさないと、アイアン・メイデンもビックリの悲惨な蜂の巣になるぞ?」 (迷っている暇は……ねえようだなッ!) 承太郎の選択は――― 「………時間だ。『ゼロ秒』! 時は動き出す」 無音だった世界が、爆発するように一斉に動き出した。 無数のナイフが空気を裂く音を醸し出し、そして――― 「―――スタープラチナ ザ・ワールド」 再び静止する、無音の世界。 承太郎を串刺しにするはずのナイフが、またも宙に止まる。 ―――――――――― 「―――むっ?」 再び止まった時が、三度動き出す。 承太郎が居た位置には既に誰も居なく、空いた空間をナイフが虚しく通り過ぎるだけだった。 DIOが視線を横にずらすと、そこに承太郎は居た。ほんの数メートル横に移動しただけだ。 初撃は、かわせた。 「…………フフフフ。ハァーーーッハッハッハッハァーーーッ!!! なるほどなぁ承太郎! 今のでよく分かったよ。ククク……そうかそうか。お前が止められる時間はその程度か」 DIOの攻撃は失敗した。 そのはずだというのに、この男の大笑いのワケは。 いや、DIOの目論みはまんまと成功したッ! 「『2秒』! お前の止められる時間は2秒といったところかな!? もしもそれ以上止められるというのなら、お前は時間停止切れのオレを追撃するためにもっと近寄ってきているはずだからなぁ!」 まさしくDIOの言った通りだった。 彼は……やはり承太郎が時を止められることを知っていた! その停止時間を測るために、初撃から得意技を披露しておいて、あえて近づき過ぎなかったのだ。 承太郎が時を止め返すことを読み、その射程距離ギリギリまで近づいた。 そして承太郎が攻撃してくるかこないかの距離を測り、時止めの『持ち時間』を逆算した。 「フフフ……間違いない。この距離でお前がオレに突っ込んでこなかったということは、お前が止められる時間は2秒! この数字が値千金! たった数秒差だが、このDIOに遥か及ばない絶望的な差だ!」 承太郎は戦慄する。 やはりコイツは俺の能力を知っていた……どころか、まんまとその停止時間まで探られてしまった。 『3秒』あれば、コイツに接近出来ていただろう。 『4秒』あれば、少なくとも拳は届いていただろう。 『5秒』あれば、すかさずラッシュの速さ比べまで持ち運べただろう。 しかし『2秒』……接近してもぎりぎりカウンターで返される、絶妙に惜しい時間。 DIOはそこまで計算して立ち回りを考えている。ムカつくが、本当に利発な奴だ。 汗が頬を伝い、床に垂れる。 「動揺しているな承太郎? 図星といったところか。 だが……だがな承太郎。オレは嬉しそうに見えて―――はらわたが煮え繰り返しそうに怒っている……ッ!」 様子が一変。 何がDIOの堪忍袋に影響を与えたのか、いきなり青筋を浮き彫りにし始めた。 「今こうしてキサマの能力を実感して、改めて許せない気持ちだ……ッ! ジョースターの血族ごときが我が『時の世界』に入門するどころか、自在に世界を『支配』するまでに至りッ!! よりによって我が唯一無二のスタンドの名までキサマの能力名に組み込むとはッ!! 『スタープラチナ ザ・ワールド』だとォ……? 吐き気がするッッ!!! その名を使うのはオレひとりで十分ッ!!」 「何に怒り出したかと思えばくだらねえ……。コイツは俺のスタンドが到達した新しい境地だ。 なにもてめえだけが時を支配できるわけじゃねえ。俺にもその『素質』があったってだけの話だぜ。 『ザ・ワールド』を冠する名がひとつだけだってんなら丁度いい―――。 ――――――てめえが消えりゃあ、時を『支配』するのは俺だけになる」 今度は承太郎がニタリと笑み、挑発する。 彼にとって、時を支配するだとかの独占欲や帝王論などどうだっていい。 挑発することで憎きDIOが激昂する、その姿が見れればおもしれえ。それだけだ。 そして激情という感情は精神に隙を生み出し、攻撃のチャンスを作ってくれる。 かつてDIOが祖父ジョセフの血を吸い、わかりやすいほどに自分を挑発してきた時のように。 それに逆上し、状況を悪化させてしまった時のように。 今度は承太郎がDIOを挑発した。 「……ときに承太郎よ。この幻想郷に話に戻るが、どうやらここの住民にも『時間に干渉できる』能力の持ち主が何人かいるらしい。 まったく世界は広いと思わないか? オレやお前だけではなく、『他にも』いるのだという。……戯けたことだが」 その言葉を聞いて承太郎は、名も聞けなかった『女中風の女』の姿をそっと思い出し……今ではF・Fと呼ばれるその者と霊夢の安否を少しだけ心配した。 だが今は目の前の敵を潰すことだけを考える。 承太郎の挑発が効いたのか効いてないのか。DIOは声の中に怒りを匂わせてはいたが、あからさまに剥き出しにするまではいかなかった。 「そんな奴らもこのゲームに参加しているならば……お前も、そいつらもすぐに潰してやる……! 帝王は常にひとりッ! 取るに足らない存在ばかりよッ!」 「……ああ、もういい。口を閉じな。 てめえの逆恨みにもならねえ論理はこれ以上聞きたかねえ。 霊夢たちが待ってるんでな、そろそろ仕舞いにさせてもらうぜ」 轟、という風切り音と共に駆けたのは―――DIOッ! 「口を閉じるはキサマの方よ承太郎ッ! キサマの停止時間は既に知れたッ! もう警戒の必要はない……! 直接ッ! この『世界』の拳で骨肉まで微塵にしてくれるわァーーーーッ!!!」 やはりなのか、挑発は無事効いているようだ。 結局の所は承太郎もDIOも、一番の武器はその『拳』ッ! だが承太郎は拳をブチ込むための『一手』をまず打った! さっきDIOから乱れ撃ちにされたナイフの内の一本、空中でちゃっかり掴み取っておいたそれを――― 「オラアッ!!」 下手投げで思い切りブン投げたッ! 一直線に投げられたそれを、向かってくるDIOは首を動かしただけで他愛なく回避する。 ナイフはその軌道のままDIOの後方を飛び、虚しく闇に消え去った。 「そんな小手先でこのDIOを脅かせるかッ! さあ、スタンド射程範囲内だぞッ!! 時は止めないのか承太郎!?」 まだ止めない。必要ない。その手には乗らない。 時間停止能力者同士が戦った場合、時止めとは基本的に後出しが有利なのだ。 もし先に止めてしまったなら、その分時止めの『持ち時間』を減らしてしまう。 そこを相手に時止め返しされた場合、持ち時間が少ないほど不利に陥ってしまうのは言うまでもない。 無論、両者の時を止められる時間に差がある場合はその限りではない。 「オラアァッ!!」 「無駄ァッ!」 鉄の塊同士が衝突したような、鈍く重い音。 星の白金――スタープラチナと、世界――ザ・ワールドの拳がぶつかった。 「凄まじいパワーだな、『星の白金』! だが時を止めるまでもなく、キサマのスタンドはこのDIOの『格下』だッ!」 「…………!! ほお、そうかい。だったら―――こんなのはどうだ?」 拳と拳が密着され、両者の振動が互いに感じられる距離で承太郎は笑う。 その視線の先……DIOの後方上部に、動く気配。収束するエネルギー。 「遠慮なくアイテムを使わせてもらうぜ。『ミニ八卦路』だ……!」 「ムッ!?」 その小さな気配を察知し、振り返ったDIOの目に映った小型の浮遊物体。 承太郎の支給品『ミニ八卦路』が燃え上がる炎を噴き出した! 「SPW財団の資料やじじいから見聞きした話によれば、てめえは俺のひいひいおじいちゃん……ジョナサン・ジョースターに『三度』敗北しているらしいな。 そしてその三度とも全てが『炎』に塗れてやられたとか。だったらこの支給品はてめえにとって『悪運の炎』になるわけだ」 DIOの脳裏に蘇る忌まわしい記憶。 最初は焼えあがるジョースター邸。慈愛の女神像に貫かれ、焼け苦しんだ。 次にウインドナイツ・ロットでの館。宿敵ジョナサンの持つLUCK PLUCKの剣に炎を纏わされ、気化冷凍法を破られた。 最後は沈みゆく豪華客船。結果こそ痛み分けであったが、船の爆炎に巻き込まれその後100年間を海底で眠る屈辱を味わった。 DIOが『氷』――アイスとするなら、彼にとって確かに『炎』――ファイアーは過去に越えられなかった壁。 その忌むべき炎に……またしてもやられるわけには――― 「―――いくものかァァァァアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!」 『 世 界 ―― ザ ・ ワ ー ル ド ―― !!! 』 DIOが、承太郎より『先』に時を止めた。 背後には大津波が如く襲い来る炎の壁。当然、後退など有り得ない。 前方には……承太郎がいつの間にか距離をとっていた! DIOが振り向いている隙に大きく離れたのだ! 「この『世界』の時止め時間を少しでも削る考えか? なまっちょろい考えだぞッ! 策を弄すれば弄するほど、人間には限界があるッ! それを今からその身に叩き込んでやろうッ!」 ―――1秒経過ッ! DIOが承太郎に向けて疾走するッ! ナイフはもう無い。己の……『世界』の拳のみが敵を打ち崩すッ! ―――2秒経過ッ! 『世界』の拳が承太郎に迫るッ! 止まっていた承太郎の時間は―――その機を狙って動き出すッ! 『 星 の 白 金 ―― ス タ ー プ ラ チ ナ ―― !!! 』 承太郎の狙いは最初からたったひとつ。 ―――DIOが何を策していようと……己が止められる『2秒』という時間の中でスタープラチナをブチかますッ!! ここから始まる2秒間で全てのケリをつけてやる。 承太郎は最大全力のスタンドパワーを『星の白金』の両拳に込めたッ!! ―――3秒経過ッ! 二人が一斉に大きく動き出した。 「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」 「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!」 「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!!」 「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!!!」 分子レベルで駆け巡る破壊衝動。疾風怒濤。無秩序の豪撃。 より早く、速く、疾く―――! より重く、強く、深く―――! 打てるコースを刹那に見切り、乱撃のスキマを潜り抜けて流星の拳を繰り出す。 飛び掛かる敵の拳を正確無比に防ぎ、致命を直前回避――グレイズ――する。 その様は無限なる弾幕の如し。ただし、幻想少女たちがやるごっこ遊びといった生易しい遊戯ではない。 本気の殺し合い。魂と魂がぶつかり合う、真の『闘い』。 千を越えるほどの火花散る、さながら星雲状態の空間。しかし両者の心に燃えるものはたった一つのシンプルな思い。 ―――『コイツに勝つ』ッ!! 瞬く間に展開する激しいラッシュの連打! 連打!! 連打!!! 連打!!!!! 連打!!!!! 両者一歩も退かず、極限まで時間を濃縮した1秒が終了する……! ―――4秒経過ッ! DIOが時を止めて4秒が経過した頃、承太郎の心に小さな『違和感』が芽吹き始める。 エジプト・カイロで散々撃ち合った相手だ。その間合いも、拳の速さ重さも、打撃の癖すらも感覚で覚えている。 『あの時』と『今』のDIO……そのスタンド『世界』も、どこか『違う』……! 「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」 「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!」 拭いきれない『違和感』はすぐに『不安』にまで開花し、承太郎の額に嫌な汗を流した。 ―――重い。そして、速い。 DIOのスタンドはこれほどまでに強烈であっただろうか……? 確かに『世界』は超強力。スタンドパラメータひとつとっても文句の付けようのない、まったく恐ろしいスタンドだ。 しかし曲がりなりにも承太郎の『星の白金』は、その『世界』にすらも打ち勝った最強のスタンド。 ―――押され、ている………ッ!? 「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」 「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!!!!」 最強の『星の白金』が、徐々に『世界』の拳に押され始めた。 (こ、こいつ……ッ! エジプトの時よりも………『強く』なっている……ッ!?) 不安は承太郎の心を茨のように取り巻き、確信に至る。 DIOのスタンドは以前戦ったときよりもパワーが『重い』。スピードが『速い』。 ―――5秒経過ッ! DIOがこのバトルロワイヤルに参加した時点で、『世界』が止められる時の限界は『5秒』だった。 そして承太郎の『星の白金』が止められる、または止まった時の中を動ける時間は『2秒』だった。 DIOが時を止めてから『3秒』が経過した時点で承太郎は大きく動き始め、拳のラッシュを展開。 そして今……『5秒』が経過し、二人の時止め終了時間が偶然重なった。 いや、偶然などではない。承太郎はDIOと自分の時止めが同時に終わるよう、調整して最初に距離をとった。 連続で時間は止められない。ここからは互いに動き出した時の中で、引き続きラッシュの撃ち合いを続けるのだ。 しかし時間が動き出すということはDIOの背後に設置した『ミニ八卦路』が文字通り、DIOに火を噴くということ。 全身粉砕か、火達磨か。DIOが辿る道はその二つのどちらか、あるいは両方ッ! そして今、時は動き―――――― 「まだまだまだまだァァッ!!! 第2ラウンドだァァァアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!」 ―――出さない。止まったままだ。 (DIO……ッ! こいつ、やはり間違いないッ! 『成長』してやがる……! 時止めの『持続時間』が……5秒よりも長いッ!!) 計算が外れた。DIOの『世界』は5秒以上に時を止められた。 『DIOの世界』で、承太郎はこれ以上動けない。置いていかれる―――! 「終わりだァ承太郎ッ!!」 ―――『成長』。 しかしそれを言うなら承太郎の『星の白金』も成長し、時の世界に入門したことだってある。 スタンドとは精神の具現。 本人の思いひとつで強くも弱くもなるのなら―――! 「――――――オラァァアアッ!!!!」 『止まった世界』の中で、『世界』の拳を『星の白金』は弾いた。 「いくぜオイッ!!」 承太郎もこの土壇場で成長する。時止めの持続時間が延びたのだ。 それはなにより目の前の『邪悪』を打ち倒さんとするため。 『勝つ』ための成長ッ! 「流石だな承太郎! キサマならきっと『動いてくる』と思っていたぞッ!! それでこそ殺し甲斐があるというものッ!!!」 ―――6秒経過ッ! 自分の成長がどこまで時止め持続時間を延ばしてくれたのかはわからない。 だが、1秒でも早く! 決着はつけるッ! DIOにラッシュを叩き込むッ!! 「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」 「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!!!!」 ―――が……! (何故だ……! こっちは完全に全力のスタンドパワーを出してんだぜ……! だが、今のコイツは……ッ!) 「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ…………ッ!!!」 「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!!!!」 DIOが時を止めてから6秒が経ち、ここで完全に『優劣』が付いた。 『星の白金』が競り負ける。 空条承太郎が、敗北する……! 一撃。 承太郎は初めて『世界』の打撃を受ける。 『星の白金』でさえ、見切れなかった一撃。 二撃。 ひとたびダメージを受ければ、次に襲い掛かる拳の群も防げない。 右肩に破壊的な衝撃。木の折れるような、鈍い音が自分の中に響く。 四撃。 間髪入れず刺してくる圧倒的なパワー。 もはや全く衝撃を受け流せない。 八撃。 意識が―――飛ぶ。 今まで自分が殴り飛ばしてきた敵スタンド使いは、皆このような重苦を味わってきたのだろうな、というあられない思いまでが浮かぶ。 十六撃。 完全に防御する腕が止まった。 『世界』の拳全てをその身に喰らいながら承太郎はふと、先ほどのDIOの台詞を思い出していた。 ―――『賢者の一角『八雲紫』は既にこのオレの掌中に落ちた。『博麗霊夢』もすぐにディエゴが刈り取ってくれるだろう』 三十二撃。 機関銃の乱射でも受けたと錯覚するような、骨の隅々が粉砕された苦痛を味わいながら、承太郎は自身の『敗因』を悟った。 (そういやあ……霊夢の奴がチラッと言っていたな。『八雲紫』とかいう大妖怪の存在を…………) 走馬灯のように過ぎ去るその記憶は、承太郎にひとつの『推測』を与えた。 DIOは……既に八雲紫に会い―――恐らくその血でも吸ったのではないか、と。 吸血鬼のDIOにとって人間の血など、どれだけ吸ったところで精々身体を馴染ませるための『栄養分』。 その身をパワーアップにまで至らせるには、『ジョースターの血』でも吸わなければ為されない。 だが―――例えば『大妖怪』の血など吸えばどうなるか。 予想は……難くないだろう。実際に今、身を以って体験している。 合点がいった。『世界』の拳が前の時より速く、重くなっているその理由。 時止め静止時間が延びた、その理由。 ―――DIOは間違いなく八雲紫の血を吸って力を上げている。 承太郎が最後に真実に辿り着いた時には既に『敗北』の後。 もはや立つことも困難。自分は―――敗けてしまったのだ。 正真正銘、真正面から戦い、真正面から敗けた。 スポーツの試合であればむしろスッと清清しくもなるだろう。だがコイツ相手には……屈辱しか感じない。 (―――悪ィ、霊夢。F・F。……じじい。花京院。ポルナレフ。…………俺は、コイツに敗北した) (―――だが、) ―――7秒経過ッ! 「勝ったッ! 死ねィッ!」 勝ち誇ったDIOがトドメの一撃を入れようと迫り――― ス パ ッ ! 敗北したはずの承太郎と『星の白金』の右腕が。 ボロボロである承太郎と『星の白金』の右腕が。 「ウガッ―――!?」 勝利を確信し、ほんの僅かに油断したDIOの左目を一閃した。 「フ、フフ……。流星指刺(スターフィンガー)……! イタチの……最後っ屁、ってやつ、だぜ…………」 三十二撃の拳を喰らっても、承太郎は倒れない。 『星の白金』の指先に力を一点集中。瞬間的に伸縮させるその技が承太郎にとっての最後の技になった。 今ので力尽き果てた。もう、動けない。 それでも承太郎は倒れない。 「……100年前、ジョースター家を乗っ取ろうと画策した時も……、 俺のひいひいおじいちゃん『ジョナサン・ジョースター』と3度に渡って戦った時も……、エジプトで俺達と戦った時も……」 それでも承太郎は不敵な笑みを絶やさない。 「……てめえの計画は過去、一度として、成功した試しなんざねーんだよ……!」 それでも承太郎の心は砕けない。 「……今回の『ゲーム』も……DIO! てめえという『悪』は…………俺たちに……敗けるぜ」 フラフラの身体で、最後に目の前の男に示したポーズは――― 「―――てめえは……『くたばりやがれ』」 手の甲を相手に向け、人差し指と中指を立てるジェスチャー。 いわゆるVサインを裏返すこの仕草は『Fuck off』。最上級に悪いスラングである。 DIOの国では、撃たれる覚悟のある人間が向ける仕草だった。 左目を縦に切り裂かれたDIOは怒りで瞼を痙攣させるも、すぐに取り直す。 そして動けずに膝を支える承太郎の背後にツカツカと回り込み――― 「俺“たち”……だと? フンッ! 他のジョースターの血統共のことか? まさかあの霊夢とかいう巫女のことではないだろうな? なんにせよ、みっともない負け台詞だったなァ……!」 DIOが承太郎の首をガッと掴む。 195センチの体格を軽々と持ち上げ、目の前にある―――火を噴いたままで止まった『ミニ八卦路』へと突き出した。 「キサマの敗因は『情報』……その思い込みだ。『思い込む』ということは何よりも『恐ろしい』ことなのだよ。 我が友から聞いていたぞ。非情に腹立たしいことだが、キサマがエジプトにてこのオレを討ち倒したという未来を。 一度戦ったのだから、ラッシュの対決では絶対に『負けることはない』……そう“思い込んでいた”。 このDIOが大妖怪の力を吸っていた可能性など露にも考慮せずにな……だから敗けたのだ。 スタンド戦において『情報』とは特に重要な要素……キサマならよく分かっているだろう?」 DIOはプッチ神父からエジプトでの承太郎との戦いの瑣末を聞き、承太郎はその経験から『今度も負けない』という自信があった。 その思い込みをDIOは利用し、ラッシュ対決に持ち込んだ。 二人が二人共、『自分が勝つ』という強い自信を持っていた。―――結果、勝利者はDIO。 「これで『8秒』経過だ……ッ! まさかキサマが止めた時の中を『5秒』も動けるとは……驚いたな。 その大健闘を称え……キサマは『火炙りの刑』だ。『悪運の炎』とはキサマのことだったなッ!」 ―――8秒経過。 『――― そして時は動き出す ―――』 ――――――承太郎の全身が、残酷に焼き尽くされた。 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽ 『ディエゴ・ブランドー』 【午前】C-3 紅魔館 廊下 紅い廊下に点々と形作られてゆく、赤い染み。 再び恐竜化された八雲紫の背に運ばれる、博麗霊夢とF・Fの身体から滴る血だった。 ドシドシという重い足音と共に無感情に歩く肉食獣を連れ歩きながらディエゴは耽る。 博麗霊夢についての記述は多少ながらこの世界の本で触れている。 幻想郷でも有名な妖怪退治の巫女。物心ついた時から修行を積み、『博麗の巫女』として生きてきた。 そんな彼女が生まれ持っていたのは『天性の才能』。巫女として充分すぎるほど、有能な力を持っていた。 大した努力もなく、与えられた役目を担い、全ての異変を解決してきた。 ―――そう、博麗霊夢は『天才』だった。間違いなく。 対するディエゴはというと、イギリス競馬界において『異例の天才』という肩書きは持っていたものの、その過程は霊夢とは随分違っている。 生まれた時から下層階級での貧困家庭。傲慢で最低だった父親の行方はわからず、母親の一途な愛のみで育ってきた。 その母も若くして社会に殺された。そんな社会の奴らに復讐すべく、ディエゴは憎悪にまみえる『奪う側』に回った。 ディエゴには何も無かった。生きるために必要な『金』も『地位』も『名誉』も、全て他人から奪ってきた。 目的のためなら何だってやってきた。それが自分にとって『必要』だと考えていたからだ。 そんな『持たざる者』だったディエゴが、『持つ者』である霊夢を憎らしく思うのは彼からすれば当然の思考。 博麗霊夢のような、最初から全てを持ち、周りから持て囃される『甘ったるい天才』が大ッ嫌いだった。 だからその全てを『奪って』やりたかった。 奪って、這い蹲らせて、その命すらも奪う『侵略者』ディエゴ・ブランドー。 男は、ドブ川の中から這い上がるような執念で『勝利』をもぎ取った。 博麗霊夢はその執念に敗北したのだ。 「クソ……ッ! 右目が……! 最後の最後で油断した……!」 裂かれた右目を押さえ、恨めしげに霊夢を睨む。 今すぐに八つ裂きにしてやりたい気持ちはあったが、そうはいかない。 DIOから霊夢の肉体の回収を頼まれている。蹴ってやりたい頼みだったが、何故だか「まあいいか」という気持ちになった。 どうもあの男と対すると、調子が悪くなる。負ける気がしないという気持ちにはなるが、気に入らないのだ。 巫女を恐竜にするのも一興と考えたが、何故だかこの女には恐竜化が半分ほどしか効かない。余計な肉体強化をさせてしまい、先の不手際を被ってしまった。 どうせこの女は『致命傷』だ。じきに死ぬ。 そう思い、今はDIOと待ち合わせるために廊下を歩いている。 一方の『F・F』と呼ばれていたこっちの銀髪メイド。 こちらはとっくに『死亡』している。急所への一撃、即死だった。心臓も停止している。 一度死んだ肉体を操っているらしいが、よくわからない生物だ。 肉体の方の銀髪女の情報もほとんど無い。ディエゴが恐竜情報網を使用した時点で彼女は既に死んでいたからだ。 死体を恐竜には出来ない。精々がDIOのおやつにでもなるだろう、という程度の気持ちで運んでいるだけだ。 「……フン。さっさと運びなよ、八雲の妖怪」 八雲と呼ばれた意識なき獣は、何も言葉を返さず二人を運ぶ。 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽ 「遅かったな。しかし無事に霊夢らを始末できたようで何よりだ。流石はディエゴ」 「これが無事に見えるってんならすぐに目を医者に見せた方がいい。……その切られた左目も一緒にな」 ディエゴがエントランスホールに赴くと、既にDIOは階段に座して待っていた。 その左目は承太郎との戦いで負傷したのか。ディエゴの右目と同じ様に縦に切られている。 「……どうやら傷の治りが遅い。これも制限とやらか。 お互い、苦労したな。私の方もほんの少し、しっぺ返しを受けた」 DIOは左目を軽く撫で、足元に倒れる承太郎を恨めしげに睨んだ。 戦いに敗れた空条承太郎。その身体は全身焼け焦げ、ピクリとも動いていない。 その身体の傍にはミニ八卦路も転がっている。どうやら炎を出し尽くして力を失ったらしい。 「殺したのか?」 「いや、しぶとくもまだ息はあるようだ。ジョースターは総じて『強運』だからな。 だがすぐに死ぬ。その前に頂ける血液は全部吸っておこうと思ってね」 DIOの肉体は元を言えば100年前に奪ったジョナサン・ジョースターの肉体。 生きているジョナサンが会場のどこかに存在していることを考えると奇妙だが、とにかくその肉体は未だDIOの頭部とは馴染んでいない。 完全に馴染ませるにはあとひとり……ジョースターの人間の血が必要だった。 その血を吸い、肉体が完全にDIOと馴染んだ時、吸血鬼として更なる力を得る。 「どんなに強靭なパワーを手に入れても、日光という弱点は消せないんだろう? 吸血鬼ってのは厄介なリスク背負ってんなぁ。オレだったらまだ人間の方がマシだと思うがね」 吸血鬼という未知なる力に興味がなくはなかったが、太陽の下を一生歩けない体などディエゴはゴメンだった。 地位を得るためという名目上では天才ジョッキーとして名を売っていたが、馬を走らせることはディエゴなりに好きではあった。 もし自分が吸血鬼などになればそれは永劫叶わなくなるのだろう。 既に自分は『スケアリー・モンスターズ』という、人間を超える肉体能力を手にしている。不死など馬鹿馬鹿しい。 「肉体の構造上、という意味でなくても人間のやれることには限界がある。 私は吸血鬼になったことを後悔したことなど一度もないよ。血の味を楽しむのもオツなものだ」 ディエゴの軽い皮肉にも嫌な顔ひとつせず、DIOはそう言って霊夢に視線を向けた。 「博麗霊夢……博麗大結界の管理人で、幻想郷バランスの一端を担う巫女か。 フフ……今まで吸ってきた女の血は数知れど、巫女の血となるとさぞかし美味だろうな。 古代ローマの処女神ウェスタに仕える巫女は、処女でなくなると力を失うと聞くが……東洋の巫女はどうかな?」 紫の背に乗せられた霊夢の体を、片腕で乱暴に持ち上げて床に落とした。 ジョースターの血というメインディッシュの前にまず、巫女の血を吸って傷を癒そうというのだ。 仰向けに転がった彼女の右肩から腰にかけて大きくナナメに切り傷が広がり、赤い巫女装束が血で更に赤黒く染まっている。 「大妖の次は巫女の血か。アンタも中々大喰らいだ……、今までに何人吸ってきたんだ?」 「君は今まで食ったパンの枚数を覚えているのかい?」 性格の悪い男だ、とディエゴは卑しく思う。 パン一つまともに食べられなかった幼少時代を思い出しながら、ディエゴは紫の体に背を預けながら『ショー』を眺めることにした。 その時――― 「―――アンタ、たち………、ゆる、……さ…な、ぃ……わよ…………」 力ない、今にも潰れそうな声が微かにだが漏れた。 その声を発した本人……霊夢が頭上のDIOを倒れたままで睨む。 「ほう! まだ意識があるとは、流石に博麗の巫女はゴキブリ並みの生命力だな。 ……だが安心して逝け。その生命力をこれから奪ってやるのだからッ!」 面白そうに叫んだDIOは、霊夢の首元に思い切り指を突き刺し、その血を躊躇いなく吸い始めたッ! 「―――っ!? く、ああぁ……! や、め…………、DI……O…………っ!!」 「ンン~~! どうだ霊夢? 純潔を穢される気持ちというのは! お前の綺麗だった血を今! このDIOがゴクゴク飲んでいるぞッ!」 ディエゴが彼の『食事』を見るのは2回目だが、相変わらず不快な光景だと息を漏らす。 女を弄び、落ちるとこまで落として嬲った経験は何度かあるが、そんな経験と目の前の光景とがダブって見えたからだ。 『持つ者』から全てを『奪う』ことに幸福感を感じるディエゴは、やはりこのDIOとよく似ている。自分でもそう思ったのだ。 まるで自分を鏡写しで見ているみたいだと、思わずその光景から目を逸らす。本当にどこまでも嫌な奴だ。 そして、DIOの『食事』は終わった。いや、『前菜』を食べ終えたと言うべきか。 「……で、感想は?」 「……『格別』、の一言でしか言い表せないな。体内の血が全てサラサラに洗浄されていくようだよ。 オードブルとして頂くにはあまりにも美味な一品……。更に力が満ち足りていくようだ。 これは……クク……! 食事の順番を間違えたかな?」 邪悪のオーラ、とでも表現すべきだろうか。 DIOの表情から滲み湧き出るその感情が、ドス黒く煌いているように見えた。 傷を負った左目も見る見ると塞がっていく。霊夢の血を吸った作用だろう。 霊夢の肉体から、生命の源でもある血液が失われた。 人は総血液量の約30%を失うと生命維持が極めて困難になると本で見たことがある。 DIOがどれだけ吸ったのかは知ったことではないが、これだけ急速に血を失えばすぐにでも死ぬだろう。 天下の博麗の巫女サマが、全くあっけないもんだと思う。 どちらにしろ霊夢を恐竜化できない以上、生かしておくこともない。 霊夢の体から『命の消滅』を感じながら、ディエゴはそれをただ冷たく見下していた。 「―――さて。次は『メインディッシュ』……ジョースターの血だ。 承太郎。キサマの血で私の肉体は完全に馴染み、最強となるのだ。 やはりこの体に一番しっくりくるべき血は大妖や巫女ではなく、ジョースターであるこそがふさわしい」 クルリと向きを変えたDIOが、承太郎の体に近づいていく。 承太郎の肉体も瀕死。全身砕かれた骨と焼け焦げた肉から、更に血液まで絞り尽くそうというのだ。全くえげつない。 DIOはコイツらジョースターを最も警戒しろとオレに言ったが、正直肩透かしだ。 オレからすればジョニィやジャイロの方がまだ危険だったが、そのジョニィも既に死亡。本当にあっけないもんだ。 ―――これにてオシマイ、だな。 ディエゴが感慨なく心で呟き、そして『あること』に気付いた。 それは今までこの部屋に承太郎の焼けた臭いが漂っていたのでわからなかったが…… (―――ん? この『ニオイ』は…………) クンクンと、自身の武器でもある恐竜の鋭い嗅覚に意識を研ぎ澄ます。 こいつは…………! 「さて……正直言ってお前をこのゲームで早めに殺せてホッとしているぞ。まったくジョースターの血統は厄介な奴らだったからな。 しかし最後は意外とあっけないものだったな。では、血を吸われて私の礎になるがいいッ! Good Bye承太郎!!」 DIOの指先が倒れた承太郎に迫る。 ――――――その時ッ! 「DIOッ! 外から参加者だ、多いぞッ!!」 ド ッ ゴ オ オ オ ォ ォ ォ ン ッ !!!! ディエゴの声が響き渡り―――次の瞬間、轟音と共に館の玄関が吹き飛ばされた。 「―――ッ!?」 承太郎への無慈悲な食事が寸前で止められる。 現れたのは―――軽トラック。 荷台には数名の女。どいつもこいつも――震えている者もいたが――ひと筋縄ではいかなそうな、強者の風格。 そして運転席からDIOを強く睨みつけている金髪の少年。 この中で最も『修羅』を経験してきたかと思わせる、そんな只者でない風格を持つ者――― ―――『黄金の風』を纏っているかのようなオーラの少年が叫んだ。 「承太郎さん! 霊夢さん! あなた達は僕らが必ず助けますッ! いま少し辛抱をッ!」 ひと際の朝風が、この場を通り抜けた。 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽ その④へ⇒紅蒼の双つ星 ― ばいばいベイビィ ― ④
https://w.atwiki.jp/terachaosrowa/pages/1980.html
他の拠点へと避難するため、地下の秘密通路へ足を踏み入れたDIOとリン。 だが、そこで一つ問題が発生した。 「ムウ……迷った」 「……………………」 秘密地下通路という言葉の響きに魅せられたDIOが、欲望のままに地下通路に隠し扉や罠を配置した結果、 元々あった他の地下通路や、地下遺跡などとも繋がってしまい、地下通路はさながらちょっとした不思議のダンジョンと化していたのだ。 「慎重に進め……いきなりモンスターハウスに突入するはめになりかねんからな」 「………………モンスター?」 この現代日本のどこにモンスターがいるのですかDIO様、とリンは内心思うがあえて口には出さず、 何故か通路に落ちていた皮の盾+2を無言のまま拾い、DIOに差し出す。 「でかしたぞリン。これで腹が減りにくくなるな」 「はあ。……あ、DIO様、階段です」 ト○ネコやシ○ン気取りの主に言いたいことが無いわけではないが、 従者という立場上それは許されず、ツッコミをぐっとこらえてリンは階段を下りる。 次のフロアが最下層であってくれと、心の底から願いつつ。 「「我等は地下ダンジョンの番人、迷宮兄弟!!」」 「「この先へ進みたくば、我等とのデュエルに勝利せよ!!」」 その願いは、速攻で裏切られたが。 「中ボス戦はデュエルか……面白い。リン、タッグマッチだ!」 DIOは嬉々として懐から自分とリンの分のデッキを取り出す。このDIO、ノリノリである。 デッキを受け取りつつも、主に聞こえないようこっそりと溜め息をつくリン。 「「「決闘(デュエル)!!!」」」 「……デュエル」 そして、鏡音リンの憂鬱は完全に無視して――地下の迷宮デュエルが幕を開けた。 【午前8時00分/地下ダンジョン】 【DIO@ジョジョの奇妙な冒険】 【状態】健康 【装備】 【道具】支給品一式、不明支給品 【思考】 1:カオスロワの混乱に乗じて、世界を制覇する。 2:邪魔者は手下に始末させる。 【鏡音リン@ボーカロイド】 【状態】肉の芽 【装備】デリンジャー 【道具】支給品一式 【思考】 1:DIOに従う 【迷宮兄弟・迷@遊☆戯☆王】 【状態】健康 【装備】 【道具】支給品一式、不明支給品 【思考】 1:デュエルに勝利する 【迷宮兄弟・宮@遊☆戯☆王】 【状態】健康 【装備】 【道具】支給品一式、不明支給品 【思考】 1:デュエルに勝利する
https://w.atwiki.jp/jojobr3rd/pages/339.html
「立ち話も何だ、席に着いたらどうだね?」 ディ・ス・コは動こうとしなかった。座るどころか動くことすら危ういと、彼は感じ取っていた。 目の前の男の存在感は圧倒的だった。それはもう、あまりに圧倒的だった。 例えるならば丸裸丸腰でライオンの檻に閉じ込められたも同然の如く。それは下手に動けば死が訪れることを嫌でも意識させられた。 DIOが椅子を指し示した指先は、長いこと、ただいたずらに宙にかざされていた。やがて彼は腕を下ろし、それを肘掛椅子の上に戻した。 男は何も言わなかった。代わりにその真っ赤な目をゆっくりと細ばめた。 百獣の王、生まれついての捕食者としての目線がディ・ス・コの身体を舐めまわしていく。 身体の隅から隅まで、一部の隙間もなく。ディ・ス・コの肌はゾクリと震えた。 そうかい、私は遠慮なく座らせてもらうがね、と男は言った。 男のの言葉には苛立ちや怒気は込められていなかった。ただ面白そうな何かを見つけた、純粋な興味がにじみ出ていた。 DIOは深々と身を沈めると息を吐き、肘掛椅子の上で頬杖を突く。しばらくの間彼は無言で天井を見つめた。 ディ・ス・コも喋らなかった。何を言えばいいかわからなかった。 沈黙が蜘蛛の張った糸の巣のように辺りにからまり……しばらくの間、二人は共に動くことも、話すこともしなかった。 沈黙を破るきっかけは音だった。 カタカタと微かに聞こえる音にDIOは首を傾けると、男の腕が激しく震えているのが目に映った。 肩にかけたデイパックがその振動を伝え、音を発していたのだ。DIOは頬笑みを浮かべ、ゆっくりと彼に向かって語りかけた。 「震えているのかい? このDIOを前にして」 ディ・ス・コは身体を固くした。それはその声がとても美しかったからだった。 美しいと思って、そして一瞬聞き惚れてしまいそうになった自分に動揺して、彼は身を固くしたのだった。 何を馬鹿なことをしているんだ、と彼は思った。この男を前に自分はなんて呑気なことを。こんなことをしている場合など断じてないというのに。 先手必勝だ。唇を噛みしめ、ディ・ス・コは自身を勇気づける。 相手は椅子に座ったまま余裕を醸し出している。そのどたまにスタンド能力を叩きこんで、一瞬で始末してやれ。 震える腕を伸ばしスタンド出現させ、構える。構えようとして……彼は、動けなかった。 そうわかっているはずだ。そう思っているはずなのに……ディ・ス・コは動かない。動けない。 DIOが話を続けても、スタンドを構えることすらしなかった。 それは彼が心の底では、男の言葉をもっと聞きたいと願っていたからかもしれなかった。 「脅えることはない、何も私は君を取って食おうとしているわけじゃあないんだ……安心してくれ」 男は安心させるよう手を広げ、そして次いではディ・ス・コに向かって笑いかけて見せた。 どうやら彼を気に入ったらしい。肘掛椅子に投げ出していた身体を持ち上げると、男は姿勢をただし、椅子の先に乗り出すように座りなおした。 膝を組み替えてリラックスした様子で、DIOはそっと囁くように続けた。 「安心と恐怖は感情の双子の様なものだ。隣り合わせ、鏡写し……言葉は何であれ、つまるところ恐怖があるから安心があり、安心があるから恐怖がある。 そもそも人間は誰でも不安や恐怖を克服し、安心を得るために生きている。名声を手に入れたり、人を支配したり、金もうけをするのも安心するためだ。 結婚したり、友人をつくったりするのも安心するためだ。人の役立つだとか、愛と平和のためにだとか、すべて自分を安心させるためだ。 安心をもとめる事こそ、人間の唯一にして究極の目的だ……」 不思議と続きが気になる話し方を、DIOはした。彼は話の最中に身振り手振りを加えることをしなかったし、大声で声高々に主張することもしなかった。 しかし、ディ・ス・コは知らず知らずのうちにその話に引き込まれていく。耳を傾け、聞き惚れ、頷いてしまう。 彼は一呼吸置くともう一度口を開いた。相変わらず、その声は囁くような声音であった。 「人間は生まれた時から死ぬ運命を背負っている。 それは誰一人例外でなく、誰にしも赤ん坊だった時があり、少年だった時があり、青年、成人、そして老人……。 やがてそうやって人は皆老い、そして死んでいく。 死は避けようもない人類共通の恐怖だ。いまだかつてそれを克服した人間は誰一人としていない。 このDIOを除いては、だが……」 快活な笑い声を挟んで、DIOは更に話を続けた。 「恐怖こそが人間を支配する感情だ。恐怖を克服するためならば、人間は死に物狂いで何かを成し遂げることができる。 君が今身につけている服も、私が手にしているグラスも、口にしているワインも全て、全てその結果だ。 恐怖という鞭が人間を進化させ、安心という飴を手に入れるために人間は生きているのだ。 そう考えると人間とは随分低俗で、愛らしく……哀れな生き物だと思わないかね? 人間は限界がある。恐怖を上回ることも、安心という檻から出ることもできない。 人間は実に物悲しい生き物だよ……。いたたまれなくて、時には見ていられなくなるほどに……」 ディ・ス・コは答えを返さなかった。 何を言えばいいのかわからなかったし、何を言っても間違った答えになるような気がして、黙って口を閉ざした。 DIOは一向に気にしていないようだった。彼は誰かに話すというよりも、自分の考えを思いのまま、口にしているだけのようだった。 「では吸血鬼になり、永遠の命を得たこのDIOは何に恐怖すればいいのだろうか? 何を目的に生きていけばいいのであろうか?」 沈黙。空白。言葉を切ったDIOはじっと宙を見つめ、そしてまた口を開く。 「……スタンドはその人物の精神の象徴といってもいい。私のスタンドの名は『世界』。能力は、そうだな……文字通り『世界を制する力』といっておこうか。 どちらにしろそれほど重要なことじゃあない。ここで取り上げるのは能力でなく、名のほうだ。 『世界』、私はこの名をいたく気に入っている。運命的な出会いとってもいいかもしれない。 その名前を初めて聞いた時、私はまるでその二文字の言葉が私だけのために用意されていたと思えたほどだ。 感動すらした。クローゼットの中でずっと袖を通すのを待っていた仕立て済みの服かのように、ピッタリと馴染んだんだ。 いずれ『世界』を制するであろう私に、まさにうってつけの名前だ。君もそう思わないかね……?」 ディ・ス・コは黙って頷いた。DIOが言うのであればそうなのだろう、そう思って彼は素直に首を縦に振る。 世界を制する。並みのものなら夢物語と馬鹿にされるだけだろうが、彼が言うとその言葉は途端に説得力に満ちたものに変わった。 本当にこの男なら成し遂げてしまうのだろう。ディ・ス・コは実際にそう思って、思ったので頷いた。 DIOは言う。彼の話はまだまだ続いた。 「再び問いかけだ。では世界を制するとは何をもってそう言えるのだろうか? 何を成し遂げれば世界を制したことになりえるのか?」 今度は頷かなかった。ただ黙ったまま頭を何度か左右に振った。 ディ・ス・コにはそんなことはわからなかったし、ただのそれ以上、思いつきもしなかった。 彼にとって沈黙が答えだった。だがそうして黙っていると、奇妙に暗闇が広がっていきそうな感覚が男を襲った。 どちらも口を閉ざしたまま長いこと時間が経った気がした。実際のところはわからない。 「君は神を信じているか?」 DIOが言った。それは突拍子もない疑問で、突然言い放たれた言葉だった。 だが、それが大切な問いかけであることはディ・ス・コにはわかった。DIOの口調でそれがわかった。ディ・ス・コは首をゆっくりと横に振る。 DIOは何も言わなかった。確認のつもりだったのか、彼はそれを見て満足そうに、小さくうなずくだけだった。 サイドテーブルからグラスを取ると、一含みを口の中に流し込み、男は言う。 「かつて最も神に近づいた男がいた。その男は数々の奇跡を起こし、人々に神と崇められ、その思想は今も生きている。 彼は水をぶどう酒に変えた。家が吹き飛ぶ嵐を片手で静めた。何の変哲もない石や水をパントとワインに変え、海の上を歩き、イチジクから命を吸い取り、そしてまた人々に命を分け与えた。 そして彼は、一度死んだ後に蘇り、その奇跡が決して不純なものでなく奇跡以外の何でもないことを証明して見せた。 人々は彼を神と呼んだ。今も呼んでいる。そしてこれからも呼び続けるだろう。人間が生き続ける限り」 それはまさか“あの方”のことを言ってるのですか。喉元まで込み上がった言葉を押し戻し、ディ・ス・コは訳もなく動揺している自分に動揺した。 そんな、まさか。ありえない。しかし本当にあり得ないかどうかとDIOに問われたら、彼は自信を持って返答できたろうか。 DIOならなれる。いや、DIOにならば“彼”を越えて見せれるのではないかと、そう思うほどまでにディ・ス・コの中には確固たる“何か”が芽生え始めていた。 「私は、神(ディオ)になるべき男だ。世界を制するとは、神(ディオ)となり、人々を導くことだと私は思っている」 だから彼はこんなにも私を怯えさせているのだろうか。 こんなにも恐怖で私を竦ませているのは、彼が神に近い男で、私に安心と恐怖を刻みなおすためなのだろうか……? 私にこれからの道筋を、導きを、もう一度示しなおすためなのだろうか……? 「惜しむべきは彼は二度の奇跡を起こさなかった事だ。結局彼が死を克服することはなかった。 だがこのDIOは違う。私は死を克服した。世界を制する力を手に入れた。 彼ができない、決して手にすることのない奇跡を、今すぐにでも実践できる力が私にはある。 このDIOこそが神に相応しいのだ。私は全てを制して見せる。運命も、生命も、世界も、時空も、空間も制し……全ての頂上に私は立って見せる……!」 力を貸してくれないか。そう囁かれた言葉が自分に向けられたものだと気付くのには、時間がかかった。 顔を上がればいつの間にかDIOは椅子より立ち上がり、ディ・ス・コと同じ地べたで同じ高さで、手を差し伸べていた。 直々に。その身で、直接。ディ・ス・コという男のために。 その時、男は初めてDIOの眼を見た。 真っ赤だった。そしてとてもきれいだった。 闇の中でもハッキリとわかるほどに、その目は光って、輝いていた。 自分を見つめるその真っ赤な目から目が離せない。吸い込まれていきそうだ。どこまで澄んでいて、輝いていて、美しくて。 すぅ……と縦に開いた瞳孔が彼を映しだす。真っ赤な輝きとは正反対に、そこには底知れない黒さが潜んでいた。 その輝きから目が離せなかった。その底知れなさに呑みこまれたいとすら、ディ・ス・コは思った。 このままずうっと見ていたいと、ディ・ス・コは思ったほどだった。叶うことならば、ずっと、そのまま……。 ディ・ス・コは何も言わなかった。ただDIOが彼を見つめていることが、たまらなくうれしくて、彼の心は大きく震えた。 その震えは今まで感じたどんな震えよりも大きな震えだった。どんなに人生で幸福だった時よりも、どんなに生涯で嬉しかった記憶よりも……。 奇妙な安心感が男を包む。ディ・ス・コは息を漏らすと、そっと瞳を閉じた……。 ▼ 「DIOさま……」 「期待しているよ、我が部下ディ・ス・コよ……」 勿体のないお言葉……、と言い放たれた言葉を最後に男の姿は闇に紛れ、そして扉を閉めるような音が微かに響いた。 DIOはしばらくの間身じろぎもしなかったが、やがて面白くもなさそうに鼻を鳴らすと、彼は椅子に深く座りなおした。 どうやら男の興味は既に次のものへと移っているようだった。先ほどとは違って、部屋には新たな緊張感が満ちていた。 見知らぬ誰かを探るような、警戒心に近い緊張感。DIOはそのままの姿勢でじっとしていて……そして不意に笑い声を洩らすと闇に向かって囁いた。 「いつまで隠れている気だい?」 それを合図としたように、ぬっと姿を露わにした男が一人。 「短い間に随分とお行儀が悪くなったじゃないかい、マッシモ」 からかうような言葉に返事もせず、マッシモ・ヴォルペは無言のままDIOの正面の席に腰かけた。 表情は硬く、顔は白い。DIOもしばらくの間は笑顔を浮かべていたが、そんな彼の様子に笑いをひっこめると、彼の顔をじっと見つめた。 二人は長いこと話さなかった。ヴォルペを落ち着かせるように、DIOは彼の膝に手をやると、そっと優しく撫でてやった。 まるで子供をあやす母親のような仕草だった。ほどなくして、ヴォルペが重々しく口を開いた。 「今、俺はこの場で死んでもいいと思ってる」 「それは何故?」 「俺の心に安心は存在しないからだ。二度と、俺の心に安心が吹くことはない」 DIOは問いかける様に彼の眼を見た。ヴォルペは黙って首を振り、その白く濁った眼で彼を見返した。 吸血鬼の彼もゾッとしない、何も見ていない眼を彼はしていた。 ふむ、と唸り声をあげDIOは顎を撫でる。そして腕を伸ばすと、躊躇いなくヴォルペの首元へとその鋭い指先をのめりこませていった。 DIOはヴォルペの血管を指先でつまんだまま動かなかった。青年もまた、動かなかった。 ほんのわずか、どちらかが身体を傾けでもすれば大動脈はかっ切られ、その男は死ぬだろう。 すぅ……と裂けた皮膚から一滴だけ血が流れ落ち、首筋に赤いラインを描いていく。 同時に俯むき具合の彼の頬に、幾筋もの涙が下りていくのをDIOは見た。 静寂の中、二つの液体だけが滴る音が響いた。涙と血。青年は泣き、血を流した。 DIOは首元から手を離した。それは長い長い沈黙の後のことだった。その間もヴォルペは泣き続けていた。音もなく、男は涙していた。 吸血鬼は立ちあがるとぶ厚いカーテンを閉めた窓際に寄りかかり、男に向かって言い放った。 「すまなかった。君を侮辱することになってしまった」 「……別にかまわない」 ヴォルペは本気だった。本当に心の底から死んでしまってもいい、と思っていた。 深い深い絶望が彼を襲い、すさんだ感情が彼を覆っていた。DIOはそれを肌越しにも感じ取った。彼の涙を見て、それを理解した。 青年の深い悲しみと、失意、そして虚無感が本物であり、自分がその事を疑ったことを恥じた。DIOはそっと視線を自らの足元へと落とした。 ヴォルペの頬を伝う涙は追悼の涙だった。一人の少女と一人の老人を想う涙。 彼と彼女がくれた安心。それが二度と戻ってこないと改めて突きつけられたのは辛かった。 一度失って、もしかしたらこの地でもう一度得ることができたかもしれなかっただけに、その辛さはより鋭く、彼の心をえぐっていた。 死んでもいいと言ったのは本当だった。何もかもが空っぽに思えた。 自分にはなにもないし、なにもわからない。わかっていない。 分かり合える時があったはずだったのに、それがわかった時には全て失った後だった。いつも、そうだった。 ヴォルペはうな垂れた。涙はとめどなく流れていた。 そうやって感情が収まっていくと、ようやく自分の正直な気持ちがわかってきて、そこにたどり着くまでにまた随分と時間がかかる自分に嫌気がさした。 暴発的に誰かに殴りかかり、感情的に心許せる男の前で涙し、そうしてようやく自分の気持ちに気づく。 ヴォルペの固く閉じた唇から言葉が零れ落ちた。それは紛れもない、彼の本心だった。 ただ……、どうしようもなく…… 「虚しいんだ」 ヴォルペは虚しかった。自分の生きている意味がわからなかった。どうしようもなく自身が空っぽに思えた。 DIOが言っていた幸福も、不安や恐怖も安心も、全部が全部自分にはもはや関係ないもののように思えて辛かった。 自分はどこにも属せない様な強い疎外感が彼を包んでいた。そして、だからこそ自身が唯一安心感を覚えた麻薬チームがどこまでも懐かしくて、愛おしかった。 それが全て終わったものだと知っていても、それを懐かしめれるほどに、彼は強くなかった。ヴォルペには彼を支える今がなかった。 虚しかった。本当に虚しかった。 壊れたオルゴールのように、その言葉をヴォルペはただいたずらに繰り返した。 DIOはじっとヴォルペを見つめていた。彼はゆっくりと立ちあがり、また元の肘掛椅子に座った。 ヴォルペの真正面に位置する椅子だ。男は青年を落ち着かせるように、そっと彼の背中に手を置き、ヴォルペの気が済むまでそうしていた。 やがて青年の心がすっかり平静を取り戻したころ、DIOはゆっくりと口を開いた。 「なぁ、マッシモ」 青年はゆっくりと顔をあげる。DIOは彼の眼を覗き込みながら、話を続ける。 「あるところに男がいた。 その男は容姿に優れ、素晴らしい運動神経と優れた知性を持ち、比類なき勇気と判断力を持っていた。 それだけでなく高潔な人間性、熱い情と強い正義感を持ち合わせていて、おまけに有り余るほどの金を持った財団とのコネがあり、更に先祖をたどれば高貴なるジョースター家直属の血統付きときたものだ。 更に更に彼、空条承太郎はこのDIOと同じタイプのスタンド、同じ能力を持っている。 ヤツが願うことはないだろうが……うまく立ち回れば世界を制することもできるかもしれない。 いや、そう願わなくても、ある程度はヤツを中心として自然と世界は回るだろう。きっとこのDIOを打ち倒した後の世界でな」 「……打ち倒した?」 「ああ、そうだとも」 「君が、敗北した相手なのか。その……空条承太郎という男は」 「正確に言えば、“ある世界”では“敗北しうる相手”と言い直させてもらおうか。 “この”DIOにとってはそれは未来に起こり得ることなので何ともいいかねることだ」 「とても信じられないな」 「私もさ、マッシモ」 DIOの口元には薄く妖艶な笑みが、貼り付けられたように浮かんでいた。 ヴォルペはその笑みから目が離せなくなっていた。その笑みにの裏には灼熱に燃え上がる何かが潜んでいることを、彼は感覚的に理解した。 「そんな全てを手にして空条承太郎という男だが……きっとヤツは今嘆いてる事だろう。慟哭していることだろう。悲しみに打ちひしがれていることだろう。 言うなれば、ヤツの屈辱的喪失初体験ってところかな……? フフ……! 空条徐倫……やつに姉や妹がいないことは把握している。母の名は知っているが、その名は既に放送で読み上げられている。 となるとこの女はヤツの妻か、娘と言ったところか……。どっちにしろ、母を亡くした男にとっては手痛い損失だな……!」 話がどこに向かっているのかわからない。いきなり持ち出された男の話に混乱するヴォルペ。それを察したDIOは丁寧にもう一度その男の話をした。 空条承太郎。その男と彼の血縁。繰り返された話を整理するうちに、ヴォルペもいつしか冷静さを取り戻していた。 涙は止まり、呼吸は整い、今しがたまで荒れていた青年はいつものように冷静な面持ちで彼の話に耳を傾ける。 大きく頷くと、ヴォルペの頭の中ではおぼろげながらに男の存在が像として浮かび上がり始めていた。 なんとも凄まじい人生を歩んできている男だ、とヴォルペは思った。 同時に、羨ましいとため息がこぼれ落ちた。どれほどの充実感、安心感を彼はその手でつかみとってきたのだろう。どれほどの満足感を、彼は築き上げてきたのだろう。 ヴォルペが決して成し遂げられないことを成し遂げれるその男が眩しかった。自分と対極的だとそれがわかり、冷えた心にチクリと痛みが走った。 DIOは気の毒そうに顔を歪めていた。ヴォルペのことを心から同情するような顔をしていた。 青年が顔あげれば彼は慈愛に満ちた頬笑みを浮かべ、励ますようにこう言った。 「不公平だと思わないかい、マッシモ」 一瞬何を言っているのかわからなかった。ヴォルペは不公平という言葉を繰り返し、DIOはその言葉に頷いた。 「君のように不運を掴まされ、不幸な人生を味わい、虚しさに身を縮めている一方で全てを手にしていた男がほんの少しの喪失で君と同じ感情を覚えているんだ。 君が望んでも得られなかった幸福感をそれこそ山ほど持っていた男が! ほんのちょっぴりを失っただけだというのに! ついこの間まで人生を大いに謳歌していた男と、この世全ての不幸を一身に背負っていたような男が同時に失い、しかしどちらも身を引き裂かれたような痛みを嘆くのだ。 こんなおかしなことはないと思わないかい……?」 じんと頭が痺れるような感触をヴォルペは覚えた。 目の前で淡い光がちかちかとちらつき、眩暈を感じた青年は椅子の中で身を固くする。 不公平。確かにそうだと思った。実際にヴォルペは空条承太郎を妬んだ。羨望した。ずるいとすら思った。 そしてその彼が今自分と同じ失望感に沈んでると考えてみると……不思議と心が揺れた。 それはとても奇妙な感覚だった。 暗く閉め切った部屋の中に浮かんだ二人の影が歪な形に膨らんでいく。 ヴォルペの中で、虚しさ以外の感情が次第に大きく首をもたげ始めていた。 「DIO……俺は」 男は何も言わなかった。ただ彼の顔には艶やかな邪さを秘めた、含み笑いが浮かんでいた。 それは、何も言わずとも君の言いたいことはわかるよ、と言わんばかりの表情だった。 男は椅子から立ち上がり、部屋から出かけの途中でヴォルペの肩に手を乗せこう言った。 焦ることはない、自分の気持ちに戸惑うことは誰だってある。じっくりと時間をかけて自分と向き合う時間が誰だって必要なのだよ、と。 いとおしむように最後に頬を包んだ彼の手の温かさが、ヴォルペは忘れられなかった。 DIOが部屋を後にする際、扉を閉めた音がこびり付いたように耳から離れない。 ヴォルペはしばらくの間石のように動かなかった。ようやく動けるころになると、彼は立ち上がり、男がずっと座っていた椅子に目をやった。 まるでそこに空条承太郎という名の男を創り出そうとするかのように、彼はずっとそこを見つめていた。 ドクドクと心臓が鼓動をたてる音が聞こえた。身体を包んでいた無力感、虚しさはもう薄れていた。 かわりに新しく芽生えた“何か”が、怪しいばかりの生々しさを訴えていた。だがその何かが、今のヴォルぺにはわからなかった。 結局自分は何もわかっていない。自分のことも、仲間たちのことも。そして……DIOのことも。 「知りたい」 そうヴォルペは呟いた。自分が今抱いている感情が一体何なのか、どうなるのか、そしてそれをどうすればいいのか。 同じ無知でも今はそれは絶望の無知ではなかった。DIOが与えてくれた新しい無知、興味だった。 ヴォルペは椅子に腰かけたまま、そっと頬に手をやり、そしてそれを薄暗がりの灯りに透かしてみた。 「空条承太郎、DIO、そして俺自身……」 室内の淡い灯りが青年の細い影を長く落としていた。影に紛れて、彼の表情は伺えない。 最後に呟いた言葉は、誰一人も耳にすることなく、やがて暗闇吸い込まれ、消えてしまった。 【E-2 GDS刑務所 外/一日目 午前】 【ディ・ス・コ】 [スタンド] 『チョコレート・ディスコ』 [時間軸] SBR17巻 ジャイロに再起不能にされた直後 [状態] 健康。肉の芽 [装備] なし [道具] 基本支給品、シュガー・マウンテンのランダム支給品1~2(確認済み) [思考・状況] 基本行動方針 DIOさまのために、不要な参加者とジョースター一族を始末する 1.DIOさま…… [備考] ※肉の芽を埋め込まれました。制限は次以降の書き手さんにお任せします。ジョースター家についての情報がどの程度渡されたかもお任せします。 【E-2 GDS刑務所1F・女子監周辺一室/一日目 午前】 【DIO】 [時間軸] JC27巻 承太郎の磁石のブラフに引っ掛かり、心臓をぶちぬかれかけた瞬間。 [スタンド] 『世界(ザ・ワールド)』 [状態] 健康 [装備] 携帯電話、ミスタの拳銃(5/6) [道具] 基本支給品、スポーツ・マックスの首輪、麻薬チームの資料、地下地図、石仮面 リンプ・ビズキットのDISC、スポーツ・マックスの記憶DISC、予備弾薬18発、ワイン一本とグラス二つ [思考・状況] 基本行動方針 帝王たる自分が三日以内に死ぬなど欠片も思っていないので、いつもと変わらず、『天国』に向かう方法について考える。 1.しばらくはヴォルペを一人にする。その後は……? 2.マッシモとセッコが戻り次第、地下を移動して行動開始。彼とセッコの気が合えば良いが? 3.プッチ、チョコラータ等と合流したい。 4.『時空間を超越する能力』を持つ主催者を、『どう利用する』のが良いか考えておく。 5.首輪は煩わしいので外せるものか調べてみよう。 [備考] ※『ジョースターの血統の誰か(徐倫の肉体を持ったF・F)』が放送中にGDS刑務所から逃げ出したことは、感じ取りました。 ※参戦時期はJC27巻 承太郎の磁石のブラフに引っ掛かり、心臓をぶちぬかれかけた瞬間でした。 ※時間軸の違いに気づきました。 ※余分な基本支給品×4(内食料一食分消費)は適当な一室に放置されてます。 ※ディ・ス・コから情報を聞きだしました。 ※不明支給品の内、ポコのものは予備弾薬、重ちー(矢安宮重清)のものはワイングラス二つとワイン一本でした。 エンポリオの支給品はスモークグレネードのみでした。 【マッシモ・ヴォルペ】 [時間軸] 殺人ウイルスに蝕まれている最中。 [スタンド] 『マニック・デプレッション』 [状態] 疲労(小)、空条承太郎に対して嫉妬と憎しみ?、DIOに対して親愛と尊敬? [装備] 携帯電話 [道具] 基本支給品、大量の塩、注射器、紙コップ [思考・状況] 基本行動方針:空条承太郎、DIO、そして自分自身のことを知りたい。 1.空条承太郎、DIO、そして自分自身のことを知りたい 。 2.天国を見るというDIOの情熱を理解。しかし天国そのものについては理解不能。 投下順で読む 前へ 戻る 次へ 時系列順で読む 前へ 戻る 次へ キャラを追って読む 前話 登場キャラクター 次話 115 死亡遊戯(Game of Death)1 DIO 138 裏切りの虹村形兆 115 死亡遊戯(Game of Death)1 ディ・ス・コ 133 最強 105 トータル・リコール(模造記憶)(上) マッシモ・ヴォルペ 138 裏切りの虹村形兆